和の心 20150805 暗闇

「夜に口笛を吹いてはならない」なぜ?

 

むかしから、夜に口笛を吹くことはタブーとされています。

地方によっては、夜に口笛を吹くと蛇が出るともいうが、いずれも不吉だとして戒めてきました。

夜に口笛を吹くなど単純に周囲の者は不快でしょうから、もちろんマナーとして当然ですが、しかし、その意味まで迷信と片付けていいのでしょうか?

 

ひとまず、ざっと迷信諸説をを挙げてみると、

①闇夜を闊歩する悪霊、鬼、妖怪を呼び寄せてしまうから。

②そのむかしに「人買い」がいた頃、夜に人知れず口笛でやりとりしていたから。つまり、人さらいが来るから。

③泥棒たちは口笛でやりとりをしていたから。

④インドの蛇使いのように、蛇を引き寄せるから。

⑤ミミズが口を舐めるから。

⑥親を吹き殺すから、もしくは親を早死にさせるから。

⑦風を呼ぶから、あるいは海が荒れるから。

⑧魔がさすからなど、枚挙に暇がありません。

思えば、お化け屋敷や怪談話の効果音でも、のこぎり音でおなじみの”ビヨヨーン”という演出は欠かせないが、これも闇夜を吹き抜ける風か口笛のようにも聞こえる不気味な音です。

古く、われわれは口笛を「嘯き(うそぶき)」と表現していました。

「うそ」とは口を狭めて出す音声そのものの意味です。

鷽(うそ)という鳥の鳴き声に似ているために、虚位の嘘と同義だとする説もありますが、ひろく「うそ」という音は、神や精霊を招く力があると信じられてきたことは確かなようです。

ようするに口笛は下品ということではなく、その逆に神聖な行為だからこそ、軽々しく行うようなことを慎む禁忌とされてきたということです。

-中略-

柳田国男著「遠野物語」第9話には、夜中に笛を吹きながら峠を越えていた男の恐怖体験がつづられています。

馬追いなどをするその男は、笛を吹くことが得意で、よく夜通し歩きながら笛を吹いていたといいますが、あるとき、その男に向かって正体不明の何者かが、谷底から不気味な高い声で呼びかけてきたといいます。

峠とはつまり国境であり、ムラとムラのあいだ、現世と来世の境界線です。

また夜は昨日という時間が死に、明日という時間が生まれ、いわば生死の境界線でもあり、あらゆる意味でマージナル(「限界」という意味でしょうか)な空間です。

当然、精霊たちと出会う場所にもなるでしょう。

そんなときに「笛を吹くこと」は、そのまま「神霊的存在を呼ぶこと」と考えるのは自然なことだったのです。

全国に「笛吹」と名乗る地名が方々にありますが、それらはおよそ神仏に関係する場所が多いという背景も頷けますね。

(文:知れば恐ろしい日本人の風習:千葉公慈著)

 

口笛の音が精霊、悪霊を呼びよせる一つとは。

今のように夜でも明るい世界ではなく(都会だけですが)、月明かりだけの闇夜、そこを一人歩き、考えただけでも怖くなりますね。

口笛でも吹きながらごまかしながらでないと歩けないですが、その口笛が呼び寄せていたのですね。

あーこわ!

夏の夜の怪談話にいいかも。