「おせち」

 

「おせち」

30日から31日にかけて、かかりっきりでつくるおせちは、防腐剤や既製品は使いません。
30日に火を入れて、三が日はもつようにつくります。
夜通しで重詰めをします。

和の心 おせち

 


古来私たち日本人は、季節の節目に神さまに収穫をお供えし、豊作や大漁を祈るという神事を行ってきました。
「おせち」とは、こん季節ごとに行われていた節会と呼ばれる神事の際に、神様にお供えした食材を調理し、自然の恵みに感謝しながらいただく料理のことを指しています。
つまり「おせち」は、厳密に言えばお正月に食べる料理ではなく、季節ごとの節会にて供される料理を意味していたのです。

しかし、日本人にとってとっても重要だった農耕を司る神様ーーー歳神様をお迎えし、その年の五穀豊穣を祈念するお正月の「おせち」は、新たな年を寿ぐものとして、特に重要な位置を占めていました。
そのため、大晦日の神さまに捧げたお供え物を、正月の朝に神さまと一緒にいただく「おせち」料理だけが広く一般に流布されるようになり、これがいつしか限定的に「おせち」と呼ばれるようになったのです。
ですから「おせち」とは本来、今も神社などで執り行われる神事において、神さまにお供えした人物がいただく食事ーーー「直会」の儀式で振る舞われる料理とまったく同じ性格を宿した、とても神聖なる存在だと言えるのです。

中でも、今のお正月の「おせち」に欠かせない雑煮と煮しめは、その原形に当たるものが、節会のはじまった平安時代の当初から供されていたことが記録として残されています。
その意味において、雑煮や煮しめが現在の「おせち」のルーツと言えるのです。
逆に言えば、雑煮や煮しめが「おせち」の原初であるところに、日本人が農耕民族として生きてきた証が隠されてもいるのです。
そこには、歳神様に五穀豊穣を祈願するため、その年の収穫物である芋類や野菜類をお供えし、それを「直会」としていただくために雑煮や煮しめが生まれたという歴史があるのからです。

いずれにしても、家庭で「おせち」をつくり、家族で「おせち」を囲む機会が減っているといわれる昨今、五穀豊穣を祈念して神さまに収穫物をお供えし、その自然の恵みを神さまと一緒にいただくという、「おせち」本来の精神ーーーその神髄を決して忘れず、次の世代へと確実に受け継いでいくことこそ、今の私たちの求められている最も重要なことではないかと思います。

そのためにも、それぞれの食材に込められた意味をしっかりと噛み締め、自然の恵みに感謝しながら、歳の瀬には「おせち」の準備をし、親から子へ、子からその次の世代へと、これまで連綿と受け継がれてきた日本人の心を、今後も伝え続けていかなければならないと思うのです。

(文:和楽 2008年)