「晴」と「け」

 

「晴」とは、行事のあるときや、お祝い、お祭りなどの日を指します。

お正月、雛祭り、入学、七夕、お盆・・・

振袖のことを「晴着」と呼ぶこともあるように、晴着とはそうした「晴」の日に着る衣類のことをいいます。

 

 

 

たとえば、京都の祇園祭は八坂神社の氏子のとっては、大きな「晴」の日です。

 

60年余り前のことになりますが、お嬢さんたちは、この祇園祭に絽(ろ)の紋付の振袖を着せてもらったのです。

絽の振袖は、盛夏だけに着る礼服です。

絽という夏専用の生地で晴着をつくることなど、今から思えばたいそう贅沢な話ですね。

 

一方、「け」とは日常の暮らしのことを指します。

普段の生活の中では、台所仕事も掃除もしなくてはなりませんから、絹の晴着を着ているというわけにはいきません。

働くときは動きやすいものを着る。

だからこそ、晴着を着ることがうれしく、特別な感慨があったのです。

 

着るものだけではありません。

食べるものにも「晴」と「け」の区別がありました。

お正月や雛祭りなどは、ごちそうを作って家族や親族とにぎやかに食卓を囲むけれど、普段はごく質素なものでした。

「晴」の日には、思い切りおしゃれをしたり、贅沢をしたり、そのために、普段、一生懸命仕事をするのです。

メリハリがあるからこそ、楽しみが際立ちます。

 

「晴」と「け」の区別が曖昧になってきている今だからこそ、流れていく暮らしにあえて強弱をつけることも、日々を豊かに過ごす知恵なのだと思います。

(参考:日本を知りたい「和の美をめぐる50の言葉」)

 

耳が痛い!

贅沢に暮らす日と、つつましく暮らす日。

メリハリがあるからこそ、楽しみが際立つんですね。

普段は質素に!質素に!

仕事は楽しみながら、一生懸命に!!

(絵:上村松園「晴日」)