「いただきます」

 

 

「いただきます」「ごちそうさま」という言葉は、外国語にはなりにくい言葉です。


気持ちとしてはやはりThank youでしょうか。

 

 

 

 

では、何への感謝かと考えると、私は「宇宙」に対する感謝の言葉ではないかと思うのです。

 

水があり、火があり、自然の恵みがある。
それらを与えてくださった宇宙というはるか大きな存在に対して、日本人が先祖伝来、自然と身につけている感謝の言葉が「いただきます」と「ごちそうさま」なのではないでしょうか。

 

私たち日本人は食事をいただく前に、そして終わった後に、感謝のひと言とともに手を合わせます。
この手を合わせるという何気ないしぐさは、多くの感謝の言葉を簡略化した、とても簡潔で美しいものであるように思います。

 

一人で食事をするときも、ちゃんと「いただきます」「ごちそうさまでした」と手を合わせていますか?
だれも見ていないところでも礼の心を失わず、行儀よくふるまうことは、すなわち「ひとりを慎む」ことです。
何より、言わないよりも言ったほうが自分が心地いいのです。

 

小さなことですが、それだけで気持ちが安らかに、落ち着くように思います。
それは身嗜みにも通じます。


人と会うときだけではなく、たとえ人の目がなくても、何ら恥じることのないような外見を整えることが身嗜みであるなら、「いただきます」や「ごちそうさま」という言葉とともに毎日を過ごすことは「心の嗜み」といえるのではないでしょか。

 

ひとりのときにも言葉にすることが習慣になるよう、心がけたいものです。

 

(文:和の美をめぐる50の言葉)