朱漆器「根来(ねごろ)」

 

 

朱漆器「根来(ねごろ)」



古びた味わいが好まれる美術工芸の中でも、朱漆器「根来」はその最たるものではないでしょうか。
使い込まれると上塗りの朱漆がすり減って下塗りの黒漆が浮かび上がり、幻想的ともいえる文様が現れてきます。

漆という言葉は、麗(うるお)し、美(うるわ)しが、転訛したものと言われています。
漆器の光沢、深みある色、滑らかでぬくもりのある手触りは、まさに麗しくも美しいものですね。


 



いま、漆器の生産地として名高いのは、輪島塗の石川県、会津塗の福島県ですが、和歌山県は、かつてそれらと並び称される漆器の産地でありました。
いやそればかりか、近代漆器のルーツは、和歌山に生まれた根来塗だといいます!

その名は根来寺(和歌山県岩出市)に由来します。
中近世に壮大な規模を誇った同寺の山内では、僧らのため朱漆器が作られました。
黒漆に朱塗を重ねた漆器は機能的で美しく堅牢なことで知られ、同様に作られた上質な朱漆器は根来と総称されるようになりました。

近代の茶人は、すり減って斑になった朱と黒の漆を「すれ味」として好んでいます。

奈良・東大寺二月堂の修二会(お水取り)で僧侶の食事に用いられる盆「二月堂練行衆盤」は、鎌倉時代から幕末まで約500年間使われたといいます。


漆器は、英語でjapanと標記されます。
陶器がchinaと呼ばれるように、欧米では漆器をもって、まさに日本を代表する工芸ですね。
確かに、器を手に取って食事をする日本の習俗の中から、軽く持ち易く、熱いものを入れても持てるものとして生み出された漆器は、japanと呼ばれるにふさわしいです。

いいですねー、あかね雲を思わせる根来塗の文様!