「衿を正す」 きものを着るようになって、少しわかるようになりました。

 

 

「衿を正す」 きものを着るようになって、少しわかるようになりました。

 

和の心 20140308 伊藤親水

 



「衿を正す」
姿勢や、服装をきちんと治す。
また、気持ちを引き締めて物事にあたるという態度を示すこと。

いいことばですね。

幼い頃よく、母が言っているのを聞きました。
他所の家に、出かけた時などはいつもそうでした。
玄関前で一寸~襟を正しなさいよ!
そう言いながら、襟元を触り服を直す。
小さいながらもなんとなく、身の引き締まる思いがしました。
やはり、母の気持ちが、伝わっていたのかもしれません。
別になんて事もない、母の仕草や言葉が・・・心に染みました。あれから、40年以上も経つのに残る。
凄いですよね~幼い時の思い。
まさしく、三つ子の魂百までです。
あのお陰で、今の自分の思いも、あるような気がします。
何の気なしに、教えていたル~ルと言うのか・・・躾・・
別に怒って行った訳ではないが、心に残っています。

「えり」という字を漢字で表すとしたら、みなさんは「衿」と「襟」、どちらを頭に浮かべますか?

一般的に洋服の場合は「襟」、和服の場合は「衿」が使われていますから、世間では「襟」という文字の方が浸透しているのかもしれませんね。

現代では「襟」と表現する方が正しいのかもしれません。
でも、今回はあえて「衿」という文字を使わせてもらいました。
というのも、もともとが着物から誕生した言葉だからです。

上手に着物を着る上で、衿元は非常に重要なポイントです。
一番顔に近いということもあり、全体の印象を大きく左右する場所でもあります。

重ね衿を使えば華やかな正装になるし、色半襟を使えばカジュアルなお洒落着にもなります。
細かいことを言えば、衿の出し方一つである程度の年齢を表現することもできるのです。

小さな面積でありながら大きな役割を持つ衿元ですが、一方ではとても着崩れしやすい、しかも着崩れが目立つ、厄介な場所でもあります。

衿元がはだけてだらしなくなってしまったり、逆に詰まって半衿が見えなくなってしまったり・・・きれいに決まらず、苦戦する方も少なくないのではないでしょうか?

そんなことから生まれた、かどうかはわかりませんが、”衣服や姿勢を整える”ことを「衿を正す」と言います。
昔の人も、着物の衿元を整えるのに気を遣ったのでしょうね。

この「衿を正す」という言葉、単に外見のことを言っているのではなく、”気持ちを引き締める”といった意味も含まれています。
むしろ、こちらの意味の方が強いくらいですね。

ここでちょっと、鏡に向かって着物の衿元を整えるときのことを思い出してください。
不思議と背筋が伸び、気持ちがシャキッとしませんか?

着物は洋服と違って、いつも着崩れを気にしていなければなりません。
これってかなり面倒ですよね。
でも、その分「衿を正す機会が増えているわけで、そう考えると、”着崩れ”って必要なのかも。。。なんて思ったりもして(笑)

(絵:伊東深水・花と舞妓)