うるしの種類 うるし3

 

 

うるしの種類 うるし3

 

ウィーンのシェーンブルン宮殿には、「うるしの間」という有名な部屋があります。
マリー・アントワネットの母親であるマリア・テレジアは、漆器をこよなく愛していました。

 

 

和の心 20140523

 

それが高じて、ついに宮殿の一室を漆黒のうるしを塗ったパネルで囲い、「うるしの間」までつくってしまいました。

また、マリー・アントワネットも、母からプレゼントされた漆器を大切に使っていたそうです。



ヨーロッパにも、アメリカにも、うるしの木はありません。
では、うるしの木の原産は日本なのか、というと、そうではないのです。
図鑑などでは、中国が原産とされていることが多いのですが、実は原産はチベットだということが明らかになってきました。
チベットのヒマラヤの山すそに生えていたものが、中国に持ち込まれて広まった、というのが最近の研究でわかってきました。

うるしの木からとれるうるし液は、主に「ウルシオール」「ラッコール」「「チオール」という三つの化学的な成分からできています。
このなかで、一番重要なのが、うるしという名称にもなっているウルシオール。
日本でとれるうるしは、このウルシオールを豊富にふくんでいます。

現在、うるしがとれる国は、大きく分けて三つあります。
ウルシオールを豊富にふくんだうるし液がとれる、日本、中国、韓国。
それから、主にラッコールを豊富にふくんだうるしが取れる、台湾、ベトナム。
さらに、チオールを豊富にふくむうるし液がとれる、タイ、ミャンマー。
このように、各々に特徴のあるうるし液がとれるのです。
一口にうるしと言っても、その特徴には以上のような違いがあります。

これらのうるし液は親戚どうしではあるのですが、質がまったく違い、「ベトナムうるし」「台湾うるし」と呼んで、日本産のうるしと厳密に区別します。
用途においてもしっかりとその使い分けがされています。
たとえば、ベトナムや台湾などのうるしは、日本では下地に使い、最後の表面処理には日本産のうるしを使うのです。

うるしの木は、実は、植物生態学的には日本全国に分布しています。
ある特定の地域にあるのではなく、日本各地に生えています。
たとえば、輪島などの漆器の産地が知られていますが、そうした産地に、もともとうるしの木がたくさん生えていたと思いがちですが、必ずしもそうではありません。

うるしの木があることと、漆器の産地であることは、今日では必ずしも一致しないのです。
現在、うるしの里、といわれているような場所は、古代から継承されてきたうるしの産地というよりは、産業奨励政策のひとつとして江戸時代以降に産業が発展し、地域の活性化策として保護奨励され、定着したものだといえます。

とは言え、こうした産業政策としてのうるし産業が定着したのは、日本全国一円、うるしの木がどこにでもあり、かつてはうるしが広範囲でつかわれていたということでもあります。

木をこころから大切にしてきた日本の伝統文化は、うるしを非常に身近なものとする文化をも育んできたのです。

(文:禅のこころ 和のこころ・篠田暢之)