うるし10  うるし栽培されなくなったのはなぜ?

 

 

うるし10  うるし栽培されなくなったのはなぜ?

 

そもそもうるしの木は、特定の産地があるわけではなく、日本全国に分布していました。
にもかかわらず、なぜ、うるしの木がなくなってしまったのでしょうか。

 

 

和の心 20140619 漆

 

 

 

うるしは日本を代表する素材ですが、実は、日本で使われているうるしのうち、日本産のうるしは、実は、わずか26%にすぎないのです。
逆に言えば、98%は輸入したうるしだ、ということになります。


第一の理由に、戦時中、うるしの木を乱獲伐採したことが挙げられます。
戦争中、燃料として最も身近で手軽に手に入れることができたのが、うるしの木でした。
戦争でダイン氏が不足しているなか、うるしの木ならば、女性や子供の用にたいして力がなくても伐採することができたのです。
燃料としても手軽でちょうどよかった。
そのような戦争中ゆえの理由があります。

二番目の理由に、戦後、うるしの木が乱獲伐採された跡地に、うるしの木を植えなおさなかったということが挙げられます。
そしてうるしの木の代わりに、スギやヒノキが植えられてしまったのです。
昭和26年、林野庁が拡大増林計画ということで、スギやヒノキを植えなさい、植えたら補助金を出します。
ということを実施しました。
そういうわけで、うるしの木が激減したまま、現代にいたってしまいました。

三つ目の理由に、これは戦争の悲劇だと思うのですが、うるしがき職人がたくさんいた地域の方々が、戦争で最も激しい戦場に送られる地域の人々だったということ。
このため、生産地を支える東北地方のうるしがき職人が激減し、うるしがきの伝統的技術の継承がほとんど絶ち切れてしまったのです。

四つめの理由は、戦後、日本で産業構造の転換がはかられたことが挙げられます。
池田勇人首相による「所得倍増計画」、これは石油製品へのエネルギー転換を基本とした、日本の構造改革でした。
結果、プラスティック製品が大量に出回り、木やうるしを素材とする漆器などは、一気に追いやられてしまいました。

このようないくつかの時代的原因や理由が重なり、うるしの民であるはずの私たち日本人のくらしが、徐々にその意味するところとは違うものになってきました。
うるしの国とと言われている日本であるにもかかわらず、日本で使われているうるしの98%が輸入うるしだということ、このことの意味を、よく考える必要があります。

この問題は、日本の森林資源の再活用や里山の再生問題と重ねて、今こそ議論されるべきではないかと思います。

(文:禅のこころ 和のこころ・篠田暢之)