第一回  目から鱗の漢字の世界

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『口』人が大きな口を開いている
カタチではない

第1回  「クチー口」

アルファベットは表音文字なので、AやBのカタチにさして意味はありませんが、表意文字である「漢字」は、その字のカタチに意味を持っています。
小学校で習いましたね、漢字は自然物や人の身体などのカタチからできあがっていると。
「人が大きな口を開いているカタチが『口』という漢字の意味と成り立ちなんだよ」。
授業で先生は、「口」という漢字で成り立ちとその意味をこんな風に説明してくれました。
すごい!と思った私は、家に帰ってすぐに鏡の前で大きくクチを広げ、習ったことを確認しました。

なるほど!「真四角じゃないけど、口はクチのカタチだ!」と感心したものでした。

知的好奇心がようやく芽生え始めた小学生の私は、「口」は「大きく開いた口のカタチ」とわかったけれど、「口」を用いている他の漢字、たとえば「兄」は何で「大きく開いたクチー口」を使っているのだろうと疑問に思ったのです。
でも、わかりませんでした。
「口」以外の漢字も考えてみました。

たとえば「道」とう漢字です。
何で「道」という字に「首」が入っているのだろう?
わかるはずもありません。
それから長い時間がたって、その疑問は解決しました。
疑問を解決してくれたのは白川静さんの膨大な漢字の著書でした。

和の素敵 漢字2

白川静さんは「口」という漢字の成り立ちを「大きく開いたクチのかたち」ではなく、こんな風に説明しています。

「~甲骨文字や金文には、人の口とみられる明確な使用例はなく、みな神への祈りの文である祝詞(のりと)を入れる器の形のさい(さい)である」。
人の口の字もあるということも紹介していますが、それでは、君、兄、客、告、祝などに含まれる口を説明できないとして、それらに含まれる口はすべてさい(さい)であると言います。

この説明で私の疑問は一気に解決しました。
と同時に、漢字ができあがってきた4千年前の世界がどのようなものであったかも理解し、漢字の込められた意味は深いなぁと思いました。
それでは、私が思った「口」を含む漢字の疑問。

それを解決してくれた白川静さんの回答をご紹介しましょう。

和の素敵 漢字 白川静

「君」

尹(い)と口を組み合わせた形。尹はI(こん〈杖〉)を又(ゆう〈手の形〉)で持つ形で、神に仕える聖職者をいう。
杖は神の杖で、ここに神を呼び招くことができた。
口はさいで、神への祈りである祝詞(のりと)を入れる器の形である。
君とは神の杖を持ち、祝詞を唱えて神を呼び寄せることができる巫祝(ふしゅく〈神に仕える人)の長であった。
この巫祝の長が統治する権限を持っていたので、氏族の長を君といった。
君はもと巫祝の長であったが、のち「君主(世襲により統治する人)・統治者・きみ(君主。主君。主人。高貴な人)意味に使われた。

「兄」

口と人(じん<儿>)を組み合わせた形。口は神への祈りの文である祝詞を入れる器さい(さい)。
兄はこのさいを頭上に載せている人を横から見た形で、神を祭る人のこと。神事は、兄弟の中では長男が担当していた。
「兄」の字がなぜ「口」が上にあるのかがわかりました。
「祝」 示と兄を組み合わせた形。
示は神を祭るときに使う机である祭卓の形。
兄はさいを頭に載せている人の形。祝は祭卓の前で神を祭ることを示し、祝は祭卓の前で神を祭ることを示し、「いのる」の意味となり、のちに「いわう」の意味にも使うようになった。
「口」や「兄」の成りたちがわかれば、「祝」も納得しますね。
「君」 尹(い)と口を組み合わせた形。
尹はI(こん〈杖〉)を又(ゆう〈手の形〉)で持つ形で、神に仕える聖職者をいう。
杖は神の杖で、ここに神を呼び招くことができた。口はさいです。 君とは神の杖を持ち、祝詞を唱えて神を呼び寄せることができる巫祝(ふしゅく〈神に仕える人)の長であった。この巫祝の長が統治する権限を持っていたので、氏族の長を君といった。
君はもと巫祝の長であったが、のち「君主(世襲により統治する人)・統治者・きみ(君主。主君。主人。高貴な人)意味に使われた。
これも納得です。

※すべて「白川静 常用字解」より 漢字から、その時代の人たちの生活の間近に神や霊があったことがわかります。

そのいくつかも、この連載でご紹介していきます。 「実は恐ろしい漢字の世界」です。



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