ジャポニスムは自然だ 小さな命や草花をいつくしむ

 

 

突然ですが、クイズ。

ゴッホが描いた「アイリス」(下の絵です)と同じく彼の代表作である「ひまわり」の違いは何でしょうか?

 

和の心 20141022 アイリス

 

答えは「土に植えられていること」。

え?

見ればわかりますよね。

でも、これ、大きな変化なんです。

 

「ひまわり」のみならず、花を主題にした西洋の絵に描かれていいたのは、それまでほとんどが花瓶に挿された花でした。

つまりは人の手を介した状態で自然を描くことが主流でした。

対する日本では、地に根ざした自然な状態で描くことのほうが多いです。

ゴッホの「アイリス」にはジャポニスムの影響を感じます。

植物のありのままの姿へむけるまなざしそのものが、日本美術を通じて輸入されたというわけです。

 

描き方だけでなく、実はアイリスという主題そのものもジャポニスムがもたらしたものでした。

もちろん、ギリシア神話の虹の女神(イリス)の名を持つこの花は、百合とともに聖母マリアの象徴とされ、西洋でもおなじみの花でした。

しかし、19世紀末以降、絵画や工芸品へのアイリスの登場は異様な増加を見せるのです。

なぜでしょう。

 

和の心 20141022 燕子花

(絵:尾形光琳「燕子花屏風」六曲一双の右隻 根津美樹館蔵)

 

尾形光琳の「燕子花図(かきつばたず)屏風」を例に持ち出すまでもなく、燕子花といえば日本ではすなわち伊勢物語の八橋。

在原業平による和歌「からころも きつつなれにし つまあしあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」と関連づけられ、連綿と描きつがれてきました。

その愛好がジャポニスムによって西洋へと伝わったというわけですが、日本では湿地に生える燕子花が、かの地では同じ陸地に咲くアイリスに読み替えられました。

ゴッホの絵のほかにも、工芸品にもさかんに登場します。

モネもジヴェールニーの庭でアイリスを育てていました。
(文:芸術新著 2014.07)

 

ジャポニスムによって発見されたモティーフ、それは自然。

自然を愛する日本人の繊細な心そのものかもしれませんね。