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日本の五感3 「嗅覚」「味覚」「触覚」

 

「日本の五感3」

遠州茶道宗家十三世家元 不傳庵 小堀宗実さんのお話し

 

今日は小堀家元のお話し、最終です。

「嗅覚」と「味覚」「触覚」のお話し。

「視覚」と「聴覚」合わせて人間の五感。

五感は私たちの感覚器官に根差したものです。

実際に感覚的に信号を脳が受け取って、それを感じていることが五感です。

みなさまの五感は研ぎ澄まされていますか。

 

「嗅覚」について

 

匂い、きれいな香り、抹茶の香りが鼻に入ってきます。

何回も経験することによって、味を推測することが香りによってできます。

ワインはグラスに注がれると先ずは目で見ますね。

そして、飲む前に香りを楽しみます。

香り、匂いを感じる感覚は、味覚へつなげていく非常に重要な要素です。

この感性は、日本人がだんだんと弱くなりつつあると思います。

昔は家庭で、何日かたったお料理を嗅いでみて、目で見てみて、判断していましたから。

 

自然の香りも大切

 

大自然の中にも、4月、5月の新緑の香り、美しい花の香り。

気分がとってもさわやかになっていくことが、とっても大切です。

香道、香木を楽しむこともあります。

香木を六種類に分けています。

伽羅と羅国、真南蛮、佐曽羅、真那賀、寸門多羅と六つに分けられます。

香木の香りの種類を五つに分けます。

五味と言います。

辛(辛い)、甘(甘い)、酸(酸っぱい)、鹹(塩辛い)、苦(苦い)

食べ物、飲み物すべてに共通しますが、お香でもそれぞれの香木で嗅覚を楽しんでいきます。

 

「味覚」について

 

味を感じる感覚として「味覚」があります。

のど越しや食感など、直接の飲食によって感じる味覚をとっても大事にしています。

食べ物の種類によって、柔らかいと思ったものがおいしい時と、硬いと思ったものが美味しい時など、種類や自分の感覚によって、美味しさが変わります。

白米も、柔らかめが好きな方と固めが好きな方がいるように、個人の好みによって美味しいが変わります。

 

直接の飲食だけじゃなく、自分の置かれた状況によって感じる味覚もあります。

春夏秋冬、季節によって、気温によっても味覚は変わります。

夏は、冷たいものを欲するし、冬は暖かいものが欲しくなります。

 

日本料理を視覚で楽しむ

 

視覚的要素の影響を受けて感じる味もある。

特に日本料理を楽しむ私たちには視覚は大切です。

お料理の盛り方、器をとても大事にします。

器が、磁気なのか陶器なのか、漆器なのかでお料理は違ってきます。

盛りつけも、一人づつ持ってくるのか、三人分づつを盛ってくるかの盛り方で美味しく感じたりします。

料理を作った人から、その食材、器にまで感謝し「味覚」として捉えることが出来るのは日本人特有のことです。

 

茶道のお手前の上手・下手によっても味は変わる。

例えば、レストランなどに行った際に、ボンッと置かれたりすると嫌悪感から味までも変わってきます。

茶道では夏の暑い時に亭主が汗をかきながらお点前していると、その汗がお茶に入ってしまわないかハラハラしてしまうなど、人間は見た目によって味が左右されます。

お点前の流れでも、所作が途切れることなく美しく動いていく中で出されると美味しく感じます。

 

茶室の道具類によって脳から情報を受けている味があります。

良いお茶碗で頂くお茶と、普通のものとではお客様の気持ちも違うので、それが味にかかわってきます。

 

「触覚」について

 

物に触って生じる感覚の触覚。

金属、磁器、陶器、漆器、ガラスなど、全部違います。

手触りや重さ、温度、口当たりなどでそれぞれ違います。

茶道で一番分かりやすいのはお茶碗。

いい茶碗か、悪い茶碗か感じるのは、手に取った時の手触り、重さや口当たりで判断しています。

 

日本では、器を手に取って箸で食事をする文化です。

もともと手の感触、器との距離がかなり近く、生まれた時から、子供の時に色々なものを触ってきて、自分に合致したものがちょうどよく感じます。

最近、通販が多くなってきてますが、本来は手に取ってみる、口に触れてみるという感覚をもっともっと経験して養っていただきたいと思います。

 

感性の伝承

 

日本にはデュアルスタンダード、同じことを同じ言葉で全く反対になったり、一つのことが正しいのではなく、いくつもの考え方があると思います。

神さまと仏さまが一緒に存在します。

公家では「あわれ」と武家では「あっぱれ」。

色々なスタンダードが日本の中にはあります。

 

私の場合は、父から遠州流の家元として色んなものを受け継いてきています。

受け継ぐ上で大事なことは、父とまったく同じことをするのではなく、父が何十年かで経験してきたことの「感覚」を受け継いでいくことが大切だと思っています。

私は最初の若いころは父の形を模倣していました。

形を受け継いでいるうちに、最後は精神的な事を受け継いでいくよになりました。

最終的には自分の型が生まれていきます。

創造の発展によって自らの形を作り上げていきます。

違う形であるが、精神性や感性は守り継いでいます。

これが今や日本人が様々な部分で行ってきたことです。

 

グローバルスタンダードの時代となり、情報化社会となりました。

でも、やっぱり基本は人と人とが実際に膝と膝を突き合わせて言葉を交わす、お互いの間合いを判断する、思いやるという事が大事だと思います。

そういう日本人の五感を伝えていきたいと思いますし、皆様方も大切にしていって頂きたいと思う。

ありがとうございました。

 

ありがとうございます。

 

五感を研ぎ澄ますというと、なんとなく自然中で過ごしている原始の人たちを浮かべるかもしれません。

五感が研ぎ澄まされてなくても殺されることはないですから。

現代の生活の中では、五感を研ぎ澄ます機会が失われているように感じます。

でも、自分の持っている素敵な能力である五感をきちんと研ぎ澄ましてみると、世界が違て見えるかもしれませんね。

小さな変化に気付いて、多くのことに感動でき、表現力がつき、想像力が豊かになるかもしれません。

そう、毎日がとても楽しくなるとおもます。

 

これを機会に、五感をもっともっと楽しんでみませんか。

いいことがたくさんありますよ。

 

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

小堀家元、本当にありがとうございました。

 

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