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阿閦如来の役割・由来・見られる寺院まとめ

「阿閦如来」と書いて「あしゅくにょらい」と読みます。見慣れない漢字で読み方も難しいですし、あまり知名度は高くありません。

阿閦如来は、物事に動じず迷いに打ち勝つ心、意志の強さを授けて下さる仏様です。阿閦如来について、詳しくお話ししましょう。

阿閦如来の由来・役割

阿閦如来は、密教が考える金剛界と胎蔵界という二つの世界のうち、金剛界の大日如来が持つ五つの智慧を具現化した「五智如来」の内の一尊です。

金剛曼荼羅で言えば、大日如来の下に配置されます。五智如来は、大日、阿閦、宝生、阿弥陀、不空成就の5つを指しています。

密教の教えはなかなか難しいため、言葉での説明ではなく曼荼羅をはじめとした図式で伝えるのが良いとされています。阿閦如来も、その密教の教えを分かりやすく形にしたものと言えます。

「あしゅく」とは、サンスクリット語で「アクショービヤ」です。その語源は「揺るぎないもの」を意味します。

物事に動じず迷いに打ち勝つ強い心を授けると言われています。阿閦如来の悟りは、まるで金剛(ダイヤモンド)のように堅いのです。

阿閦如来には実在するモデルはいません。大乗仏教の初期に架空の人物をモデルに考え出され、8世紀ごろに日本に伝わったと言われています。ただし、阿閦如来について記した歴史的資料が少ないため、その成立については諸説あります。

その阿閦如来が誕生したエピソードをご紹介しましょう。阿閦如来はもともと大日如来の下で修行をしていた、一人の比丘(男性の修行僧)がモデルだと言われています。

彼は東の浄土で、全ての生きとし生けるもの、特に人間に対しての怒りを断つと宣言して修行に励みました。そして、厳しい修行の末、ついに悟りを得ることが出来たのです。

その姿を見ていた、師匠である大日如来から阿閦(あしゅく)の名前を授かったといわれています。また、阿閦如来は今も、東の浄土で衆生を救うために説法を続けていると言われています。

阿閦如来は大日如来の智慧を表した一尊と言いましたが、具体的には「大円鏡智(だいえんきょうち)」とう智慧を具現化した仏様になります。そもそも智慧というは、物事を正しく認識し、判断するということです。

「大円鏡知」は、その正しい判断が出来る心を大きな鏡に例えているのです。清らかで純粋な心が、鏡のように森羅万象の真実・万物の形をありのままを映し出すという意味を持っています。

阿閦如来の御神徳・ご利益

阿閦如来の真言は「オン アキシュビア ウン」です。分かりやすく言い換えると、その意味は「どうぞ私を怒れる心から離してください。そして、菩提心へとお導き下さい」ということになります。この真言を唱えることで、三毒(貪・瞋・痴)の心を鎮めてくれるといわれます。この三毒というものが煩悩の最たるもの、人間の悩みや苦しみ、諸悪の根源とされているのです。

具体的に言うと、三毒の「貪」は、貪欲にむさぼり求める心を示します。「瞋」は、怒りや憎しみといった感情です。「痴」は、愚痴や心の愚かさをいいます。
このような衆生の人々が持つ負の感情を、よい方向へと導かれる仏様と言えます。

また、阿閃如来は薬師如来と同等とされていることが多々あります。これは、阿閃如来も薬師如来も東に浄土を持っていると言われているからです。そのため薬師如来と同じように、滅罪の功徳、病気治癒や無病息災のご利益があるとされています。

阿閃如来に関する資料は少ないと申し上げましたが、阿閃如来の信仰で有名な歴史上の人物がいます。それが光明皇后です。光明皇后は、聖武天皇の妃です。聖武天皇と言えば奈良の大仏を作られた方ですが、奥様である皇后も仏教を厚く信仰していました。

光明皇后は法華時をはじめ様々な仏教施設を建てられた人です。その慈悲深い心から、貧しい人や孤児を救う「悲田院」という施設や、今の病院のような「施薬院」という施設を作りました。

さらには、自ら病人の治療をおこなったという話が残っているほどです。光明皇后は法華寺にある浴室で、1000人の人の汚れを自らの手で洗い流すという誓いを立てられました。

そして1000人目に訪れた病人の身体に触れて毒素を吸い出すと、その患者が成仏して阿閃如来に変わったという伝説も残されています。

余談にはなりますが、同じような伝説が行基にも残されています。行基は奈良時代の僧侶です。彼が有馬温泉を訪れたときに、通りすがりの病人が「肌に触れてほしい」と頼みました。そして、行基の口がその患者の肌に触れたとたん薬師如来になったという話です。

どちらの逸話も、阿閃如来と薬師如来が同じように病を治すご利益があることからきています。

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阿閦如来の像容

阿閦如来の姿は黄色または青色と言われています。また、他の如来に比べて薄い袈裟を身にまとっているため、袈裟が体にぴったりとまとわりつくような仏像が多いとされています。

左手で衣の端を握り右手を下げて手の甲を外に向け、右の指先で地に触れる「触地印」を結んだ坐像として表されます。この「触地印」という印相は別名「降魔印」と呼ばれています。

この印相は、修行中の釈迦が悟りを開こうとしている時、たくさんの悪魔が邪魔に入り、その悪魔たちを追い払ったという伝説からきています。
恐怖や誘惑、障害になどに打ち勝つ、真理を求める強い心の象徴です。

阿閦如来が単独で安置されていることはほとんどありません。五智如来のうちの一尊として奉っていることがほとんどですが、印相が大変特徴的ですので、そこで他の如来と見分けがつきます。

阿閦如来が見られる有名寺院

先ほども申し上げたとおり、阿閦如来は五仏の1つとして造像されたものが大半を占めます。京都府の東寺の中心にある講堂には、高さ3メートル弱の大日如来が安置されています。その周りを取り囲む仏像の一つに阿閦如来があります。高さは約1メートル40センチほどです。

同じく京都府にある安祥寺に木像の阿閦如来が安置されています。こちらも大日如来を中心にし、阿閦如来を始め、周りを取り囲む仏像は一回り小さくなっています。

奈良県では、西大寺に平安時代に作られた阿閦如来があります。他に法隆寺大宝蔵殿南倉に安置されている木造坐像や、和歌山県高野山の親王院でも阿閦如来を見ることができます。

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阿閦如来のレプリカ像を手元に置いておくことは出来るのか

楽天で「阿閦如来」と検索すると、阿閦如来の仏像が1件だけ販売されていました。PEMA NIMAで購入できます。高さ約12cm×最大幅7.5cm×奥行き約5cm、重さは195gのセラミック製です。

ネパールで作られており、「細かな彫り細工が見事な仏像」という商品説明にもあるように背面もきちんと彫られています。1,380円(税込・送料別)で大変お手頃な価格で手に入ります。

 

 

 

一方、Amazonでも「阿閦如来」と検索すると、楽天と同様に1件見つかりました。工場直販のこだわり仏像専門店 栗田貿易で販売されている阿閦如来は縦6.2cm×横4.5cmの手のひらサイズで、柘植を使って作られています。中国製で、お値段は3,140円(税込)でした。

まとめ

阿閦如来はあまりよく知られていませんが、この仏は怒りを鎮めて不動心を持つとされています。

「怒り」という感情は、今も昔もコントロールが難しいものです。様々なストレスに晒されている現代人も、阿閦如来の教えを顧みるといいのではないでしょうか。

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