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「当たり前」 何に当たるのでしょうね?


(「浮世風呂」より 式亭三馬編/北川美丸画)

 

「当たり前」って

 

こんにちは。

私たちが日常なにげなく使っていることばの中には、ふと気がつくと、その由来がわからない語句がたくさんあります。

生活に必要な語句の中にも、そのルーツを知りたいと思うことばがありませんか。

今日は、「当たり前」についてルーツを探ってみたいと思います。

何に当たるのでしょうね。

 

当たり前は「当然」という語がもとになっています。

 

「当然」は江戸時代には「当前」とも書きました。

「当前」を訓読みするとアタリマエとなるから、当たり前というようになって広がりました。

式亭三馬の「浮世風呂」にもアタリメヘサの表現が見られます。

 

もとは「当然」という意味のほか、共同で仕事をして得た収穫を分配するときに、一人分の受け取る分け前のことがアタリマエでした。

農作業収穫物を分配するときの一人前の分量や、魚を捕りに行って漁獲物を分配する場合に、人の数によって分けた一山のことをいいました。

その分け前を受け取ることは道理に適い当然の権利でした。

そこから、ごく普通のありふれたことをいうようになりました。

 

予想外のことを「当たり前の外」といいます。

世の中ではアタリマエと思っていることが、誰かにとっては当たり前でなかったり、その逆に自分が当たり前だと思ったことがつうじなかったりすることはよくありますね。

 

「当たる」は、多くの意味を持ちます。

 

当たるという語はもともと多くの意味を持つ多義語です。

目標にぶつかる・命中するいう意味で平安時代から使われ、鎌倉時代には、くっつく・接触するという意味ができました。

人と接触することから、のちには人をひどく扱うということも意味するようになります。

物事に探りを入れることにも、「辞書に当たる」のように、照合して確かめることにもいい、野球で打者がヒットをよく打つことにも、「よく当たる打者だ」のようにアタルを使われました。

光がまともに指すの意味で当たるといい、光や風を身に受けることも当たるというし、役目を担当する、ある事に直面する、飲食物が体に障ることにもいいます。

ほかにも、ぴったり対応する、まともな対応する、ある順位や資格などに相当する、ちょうどその方向や時期に該当する、合致する、的中する、願いどおりになることや対戦相手として巡り会う、などの意味で使われるように、アタルということばの受け持つ範囲は広いです。

命中する・体に障るの意味のアタルには「中」の字を用いることがあります。

 

このほかにも忌み言葉として、くっつく・接触するという意味でのアタルが用いられることがあります。

髭をソル(スルとも)といわないでアタルといい、商家では「磨る(する)」を忌みアタルといいます。

すり鉢をあたり鉢といったり、「するめ」を「あたりめ」といったりする類いです。

 

 

福引に当たる

 

福引にアタルのは、幼少のころの楽しい思い出につながります。

福引は人々に景品を分配する籤(くじ)です。

平安時代には、年の初めには餅を引き合い、その取り分の多少で一年の吉凶をうらないました。

当時、フク・フクダ・フクテと呼ばれていました。

ふくれるものをいう意味からです。

餅を引き合うことからフク引きという語になったのです。

 

中世から「福」という文字の持つ意味が喜ばれました。

それで福引の字を当てるようになりました。

のちに綱などの先にいろいろの景品を付けて引き合う正月の遊びになり、さらに近代になると、商店の売り出しや宴会の余興などで籤を引かせて、当たった人に景品を出すことをフクビキというようになります。

 

上前は

 

さて、当然を当前と書いたために「当たり前」というようになったのですが、同じように、「上前」ということばは「上米」の「米」の字を前に変えたものです。

上米は古くは寺社へ寄進した米のこと。

近世の通行税の一種からとも考えられています。

その代金の一部を仕事や売買を取り次ぐものが掠め取る(撥ねる)ことを上前をはねるといいますね。

(参考:ことばの由来 著 堀井 令以知)

 

ありがとうございます。

 

今日は「当たり前」について書きましたが、他にも由来を知りたいことばがたくさんありますね。

「どっこいしょ」とは何?「べそをかく」とは何をすること?

ことばというものの思いがけない生い立ちに目を見張り、日本文化と深くかかわりある日本語の面白さ。

豊かで、隠されている先人の知恵がそこには、たくさん含まれていますね。

 

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

やっぱり日本は素敵ですね。

 

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