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「古き良き伝統」を見直す時期 「物が豊かで心は貧困な時代」

 

素晴らしい生田神社 加藤名誉宮司

こんにちは。

先日、神戸にあります生田神社の加藤名誉宮司とお会いしました。
昭和9年生まれなので84歳でしょうか、私と同じ戌年ですね。
現在は生田神社の名誉宮司だけではなく神社本庁常務理事、兵庫県神社庁長など多数の重職を今でもこなされていらっしゃる神社界の重鎮でいらしゃいます。

そんなお忙しい加藤さまから素敵な本をいただきました。
「神と人との出会い」、もちろん加藤さまのご本。
若き日までさかのぼり、八百万の神と神、そこに集う人と人、さらに神様と仏さままで結びつけた現代神道の頂点に至る柔軟な足跡が書かれています。
その中から「古き良き伝統を見直す時期」というお話がありましたのでご紹介します。

今の教育について一言

2015(平成27)年11月18日、私は15年度地域文化功労者に選ばれ、文部科学大臣表彰を受賞した。
表彰者の中に神社界では、讃岐のこんぴらさん、すなわち金刀比羅宮(ことひらぐう)の琴陵容世(ことおかやすつぐ)宮司か香川県より選ばれて東京で出合った。

地域文化功労者表彰は、芸術文化の振興、文化財の保護など地域文化の振興に長年にわたって功績のあった個人及び団体に対し、その功績をたたえて文部科学大臣が表彰する。
都道府県に推薦を依頼し、文化庁において選考し決定されたという。

文科省の門を初めてくぐり、馳浩(はせひろし)大臣より表彰を受けたことは、誠にありがたく光栄に思った。
その上で、私は今の日本の教育について一言申し上げたのある。

 

物が豊かで、心は貧困な時代

最近特に感じるのは、IT革命によって浸透したインターネットやパソコン、携帯電話などを活用してさまざまなことが成し遂げられる社会の功罪。
今、若者のマナーの悪さが各所で指摘されており、原因の一つとして「稽古事」の不足を挙げた。

かつて男女とも武道、謡曲、書道、華道など習い事をする風習があった。
企業や学校でもこれを勧めて行い、礼儀、作法が知らず知らずのうちに教えられていた。
現在はこうしたマナーを教える人や機会が減ったことも影響し、他人に迷惑をかけることが多くなっているのではないか。

また神社や寺院に参拝する若者が増えつつあるのだが、お参りの作法や仕方がわからないのである。

現代は「物が豊かで、心は貧困な時代」。
便利なパソコンなどの利用に反比例して、青少年、幼児の努力や辛抱、集中力、持続力の欠如が叫ばれている。

一方で、今の学校指導の主流は「カウンセリングマインド」。
生徒の目線に立って共感し、理解するという教育である。

こうした中、私は同僚神職の祝賀会に福島県・会津を訪れ、ついでに見学した旧会津藩の藩校「日新館」で、日新館の教育方針が目に留まり、ある種の感動を覚えた。

旧会津藩士の子弟たちは10歳になると、日新館に入学させた。
入学する前の6歳から9歳の子供は「什(じゅう)」というグループに属し、遊びも勉強も一緒にしていた。
その中で守るべき規則を「什の掟(おきて)」といった。
次のような内容だった。
 「年長者の言うことに背いてはなりませぬ」
 「卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ」
 「戸外で物を食べてはなりませぬ」

このような7カ条が記されており、「ならぬことはならぬものです」と締めくくっている。

今、こんなことを言うと全くアナクロニズムである、と一笑に付されてしまうことであろう。
しかし、社会や学校、家庭でモラルやしつけに関する教育力が低下している中、今こそ古き良き伝統を見直してみるべきではないか。
そんなことを思いつつ、文部科学省を後にしたのである。

 

ありがとうございます。

明治維新から150年、第二次世界大戦から73年、文明が大きく進歩した50年。
特にこの20年のITの急激な進化が世の中を大きく変えました。
良しも悪しも、これからのことを考えて「何を大切にしていかなければならないのか」見直さなければならない時が来ているのではないでしょうか。

古きは中国(隋や唐、それ以前も)からの最新の文化や文明を取り入れ上手に日本風にしていけたのに、近代では西洋文明をそのまま取り入れ日本風がなくなってしまったのでは。
長い長い日本の歴史の中の僅かなこの数年で、歴史を文化をなくしてしまったのではないでしょうか。
誰が悪いとかではなく、私たち1人1人が生きている(生かされている)という自覚の中から本当に大切なことを考え、できることをしていかなければならないですね。

何よりも大切なことは「これからの世の中」を真剣に考えることではないでしょうか。
子どもや孫、これからの子孫に何を残すか、あたりまえの幸せを残せるのか。
今や歴史や文化の話だけでなく、自分勝手に生きてきた人間が残してきた問題が山積みです。
世界を見れば何よりも地球規模の環境問題。
日本を見れば食糧問題も。

もうじきこの星が悲鳴をあげて、いやもう悲鳴を上げているかもしれません、気がついたら「ノアの箱舟」に乗らないといけないかも。
もしかしたら「ノアの箱舟」の助けもないかもしれません。

 

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ちゃんと現実を見れる眼を持ちましょう。ちゃんと大切なことを感じる心を持ちましょう。

 

 

本「神と人との出会い: わが心の自叙伝」著:加藤隆久さま

 

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