天部の由来・役割と主な尊像

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天部の由来・役割と主な尊像

仏像が好きで様々な寺院を巡る方、仏像に美術品としての価値を感じている方もいるでしょう。できれば仏像のレプリカを手元に置きたいかもしれません。

仏像のレプリカ購入についてご紹介する前に、まずは各仏像についてご紹介します。今回は天部についてです。

 

天部の由来

「天部」と言いますが、「天部」の「部」は部門、グループという意味があります。そのため「天部」を「天」とだけ呼ぶこともありますが、仏像を表す時に日本語で「天像」とは言わず、「天部像」と言い習わされています。

その「天」とは、サンスクリット語では「デーヴァ (deva) 」のことで、「神」を意味する語です。

ギリシャ神話の「ゼウス」やラテン語・キリスト教の「デウス」も同じ様な意味です。その「デーヴァ (deva)」が中国において「天」と訳されたものが、日本語としても使われているのです。少しややこしいのが、天部が住んでいる世界(devaloka)のことも「天」と訳されていることです。

ゾロアスター教においては、デーヴァに相当する「ダエーワ」はこれまでに言われた「神」と違い、「悪神・悪魔」とされているそうです。捉え方が様々あって興味深いですね。

天部諸尊のルーツを辿ると、それは古代インドのバラモン教(古代のヒンズー教)の神々でした。

神々というのは、宇宙の創造神から悪霊鬼神まで種類は様々あります。それが仏教に取り入れられ、仏の守護神となりました。天部とは、天界に住む者の総称だと言えます。

日本で言う「八百万(やおよろず)の神」と言うと、イメージしやすいかもしれませんね。仏像の中では、毘沙門天・帝釈天のような天像の総称ということになりますが、この仏像の種類は後ほど詳しくご紹介したいと思います。

 

天部の役割

それでは、天部の役割とはなんでしょうか。それは大きく分けて2通りあります。まず1つ目は、仏法を外的から守り、信仰の妨げとなるものを排除するという役割です。続いて2つ目は、如来や菩薩よりも人に近い立場で現世での現世利益の福徳を人々に与えてくれることです。

如来や菩薩、明王の、人々を教化して救済してくれるという役割とは異なっていますね。

如来や菩薩、明王との違いというと、実は「恋愛をするか」という点があります。

如来や菩薩、明王は性別を超えた存在ですので、恋愛、結婚といったことはしません。しかし神は神でも、天部の神々はそうではなく、欲のある輪廻の世界の一員なのです。まだまだ、欲があり、恋愛や結婚も行います。

この様に天部は、如来・菩薩の領域と人間の領域の中間に位置する存在だと言えます。凡夫※1は欲、色、無色の三界を輪廻すると言われています。天部が住んでいるのは、この三界にある二十八の天界だと言われています。

※1「凡夫は身見をもって性となす」といわれて、我見にとらわれている人をいう。自己に実の我があると考え、自と他とを区別し自分に執着して、その差別観の中に苦悩している者のことである。(ウィキペディアより)

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天部の御神徳・ご利益

仏法の守護神・福徳神という意味合いが強い天部。役割にもある様に、人々に様々な現世利益の福徳を与えてくれる存在です。

現世利益とは神によって異なりますが、金運向上、財産倍増、商売繁盛、事業繁栄、五穀豊穣、学業成就、才能向上、芸能上達、芸術向上など様々あります。

 

天部の像容

天部は元々インドの神々だったものを護法尊として尊像化したため、様々な姿がありますが、その姿から二つに分けて表現されています。

1つ目が鎧で武装した天部で、「武装天部」と呼ばれます。2つ目が貴族のような衣服をまとった天部で「貴顕天部」と呼ばれています。

 

 

主な天部の尊像と見られる有名寺院

梵天

宇宙の創造神であり釈尊の守護神。仏や菩薩を守護しています。

古代インドのバラモン教の最高神であり、万物の根源となるブラフマーが仏教に取り入れられたもので、十二天に含まれています。

唐の貴人を模した礼服姿で、人間に近い姿や、四面四臂の姿であらわされています。またヒンドゥー教では、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)と共に、三大神の1人として創造神ブラフマーが数えられています。

見られる有名寺院

東大寺法華堂(三月堂)乾漆像
法隆寺旧食堂塑像
唐招提寺金堂木像
瀧山寺瀧山寺像
東寺講堂木像

 

◇帝釈天

釈尊の守護神。ヒンドゥー教の神インドラ(雷神)が仏教に取入れられたものです。梵天と一対の像として表されることが多く、両者で「梵釈」とも言います。

唐代の衣装を身に着けた貴人風のものが多く、手に金剛杵や蓮などを持っています。頭には宝髻を結い、甲冑を身につけ、金剛杵、香炉などを持って白い象にまたがった姿のものも存在しています。

◎見られる有名寺院

東大寺法華堂(三月堂)乾漆像
唐招提寺金堂木像
経栄山 題経寺(通称 柴又帝釈天)本尊
東寺講堂木像

 

◇吉祥天

起源は幸福の神。ヒンドゥー教の女神であるラクシュミー(Lakṣmī)が仏教に取り入れられたものです。別名、功徳天、宝蔵天女とも言う、五穀豊穣や財宝充足の女神です。

仏教において夫が毘沙門天で、ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の妃とされています。

◎見られる有名寺院

浄瑠璃寺 吉祥天立像
吉祥院天満宮 尊像

 

◇弁財天

ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティー(Sarasvatī)が、仏教に取り込まれたものです。水を司る七福神の一人で、豊穣の神です。

像容は8臂像と2臂像の大きく2つに分かれます。豊穣神以外にも、音楽神、福徳神、学芸神、戦勝神など幅広い性格を持っています。

◎見られる有名寺院

東大寺法華堂(三月堂) 8臂の立像
白雲神社 弁才天像(2臂の坐像)
鶴岡八幡宮 鶴岡八幡宮像(2臂坐像)

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◇四天王

仏教世界の中心に位置する須弥山の四方を守護する仏たちで、帝釈天の配下です。

①持国天
東方を護る守護神。仏堂内部では本尊向かって右手前に安置されています。

②増長天
南方を護る守護神。仏堂内では本尊向かって左手前に安置されています。

③広目天
西方を護る守護神。仏堂内では本尊向かって左後方に安置されています。

④多聞天(別名:毘沙門天)
北方を護る守護神。仏堂内では本尊向かって右後方に安置されています。
四天王の一尊として造像安置する場合は「多聞天」、独尊像として造像安置する場合は「毘沙門天」と呼びます。

◎見られる有名寺院

興福寺 木造四天王立像
東大寺戒壇堂 四天王像

 

◇韋駄天

増長天の八将の一神で、四天王下の三十二将中の首位を占める天部の仏神です。仏教に取り入れられてからは、特に伽藍を守る護法神とされています。

元はシヴァ神の次男で、不老の生命を有すると信じられていました。

◎見られる有名寺院

萬福寺 韋駄天像

 

◇大黒天

仏教での大黒天は、元々はインドで破壊を意味する暗黒の神です。

インドのヒンドゥー教のシヴァ神の化身である「マハーカーラ」と呼ばれる神が、仏教に取り入れられ、マハー=偉大な(大)、カーラ=暗黒(黒)という意味から大黒天と名付けられました。

財福の神、戦いの神、また厨房・食堂の神ともされています。

密教の伝来とともに日本にも伝わっており、神道の大国主と神仏習合した日本独自の神としての大黒天の方が現代の日本ではイメージが強いでしょう。七福神の一つで、恵比須とともに福徳の神とされています。

◎見られる有名寺院

西大寺 木造大黒天坐像
金剛輪寺明寿院 大黒天半跏像

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◇金剛力士

仏教の護法善神(守護神)である天部の一つ。語源は「金剛杵を持っているもの」という意味で、サンスクリットでは「ヴァジュラダラ」と言います。

開口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体を一対として、寺院の表門などに安置することが多いです。

◎見られる有名寺院

法隆寺 仁王像
東大寺 仁王像
興福寺 仁王像

 

◇鬼子母神(訶梨帝母)

仏教を守護するとされる夜叉。梵名ハーリーティーを音写した訶梨帝母(かりていも)とも言われています。

500~1000の子供がいたとされていますが、その子らを育てるために人間の子供を食べていました。

そこで釈迦が未子を隠すことで我が子を失う悲しさと命の大切さを説き、「安産」や「子育て」や「盗難除け」にご利益のある善神「鬼子母神」となったのです。

◎見られる有名寺院

法明寺鬼子母神堂  鬼子母神像
醍醐寺 訶梨帝母(鬼子母神)像

 

◇十二神将

薬師如来および薬師経を信仰する者を守護するとされる、十二体の武神です。

1.宮毘羅 (くびら)
2.伐折羅 (ばさら)
3.迷企羅 (めきら)
4.安底羅 (あんてら)
5.あんに羅 (あんにら)
6.珊底羅 (さんてら)
7.因達 (陀) 羅 (いんだら)
8.波夷羅 (はいら)
9.摩虎羅 (まこら)
10.真達羅 (しんだら)
11.招杜羅 (しゃとら)
12.毘羯羅 (びから)

◎見られる有名寺院

新薬師寺像 塑像
興福寺東金堂像 木造
興福寺像 板彫
広隆寺像 木造

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◇十二天

この世界を守護する一二の神の総称です。四方・四維の八天に上・下の二天と日・月の二天を加え 12種あります。

十二天のうち、特に八方(東西南北の四方と東北・東南・西北・西南)を守護している諸尊を、八方天あるいは護世八方天と言います。

その8方天に、天地を護る諸尊を加えて十天とも言います。

1. 帝釈(たいしやく)天(東)
2. 火天(東南)
3. 閻魔(えんま)天(南)
4. 羅刹(らせつ)天(西南)
5. 水天(西)・
6. 風天(西北)
7. 毘沙門(びしゃもん)天(北)
8. 伊舎那(いしやな)天(東北)
9. 梵天(上)
10. 地天(下)
11. 日天
12. 月天(がってん)

◎見られる有名寺院

西大寺 十二天画像(十二天はほとんどが画像)
無量寺 木造

 

◇ 八部衆

仏教が流布する以前の古代インドの鬼神、戦闘神、音楽神、動物神などが仏教に帰依し、護法善神となったものである。十大弟子と共に釈迦如来の眷属を務める。

1.天衆
2.龍衆
3.夜叉衆
4.乾闥婆衆
5.阿修羅衆
6.迦楼羅衆
7.緊那羅衆
8.摩睺羅伽衆

◎見られる有名寺院

興福寺旧西金堂 安置像

 

◇二十八部衆

千手観音の眷属の事である。 東西南北と上下に各四部、北東・東南・北西・西南に各一部ずつが配されており、合計で二十八部衆となる。

1.密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし)
2.那羅延堅固王(ならえんけんごおう)
3.東方天(とうほうてん)
4.毘楼勒叉天(びるろくしゃてん)
5.毘楼博叉天(びるばくしゃてん)
6.毘沙門天(びしゃもんてん)
7.梵天(ぼんてん)
8.帝釈天(たいしゃくてん)
9.毘婆迦羅王(ひばからおう)
10.五部浄居天(ごぶじょうごてん)
11.沙羯羅王(しゃがらおう)
12.阿修羅王(あしゅらおう)
13.乾闥婆王(けんだつばおう)
14.迦楼羅王(かるらおう)
15.緊那羅王(きんならおう)
16.摩侯羅王(まごらおう)
17.金大王(こんだいおう)
18.満仙王(まんせんおう)
19.金毘羅王(こんぴらおう)
20.満善車王(まんぜんしゃおう)
21.金色孔雀王(こんじきくじゃくおう)
22.大弁功徳天(だいべんくどくてん)
23.神母天(じんもてん)
24.散脂大将(さんしたいしょう)
25.難陀龍王(なんだりゅうおう)
26.摩醯首羅王(まけいしゅらおう)
27.婆藪仙人(ばすせんにん)
28.摩和羅女(まわらにょ)

◎見られる有名寺院

蓮華王院(三十三間堂) 木造二十八部衆立像

 

まとめ

仏像の姿形が好きでも、その細かい由来や役割は知らなかった人もいると思います。

天部と言われてピンとこなかった方も、その中身を知ることで、実は身近に知っている神だと感じたかもしれません。

また、より人に近い神である天部の魅力を感じた人もいらっしゃるかもしれませんね。



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