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「和の変」  お山の杉の子 その2

「和の変」

 

 

じつは、日本の風景や習俗、歌謡、言葉・・・などには
「変なこと」や「変化したこと」がけっこうあります。
私たちが目にしたり聴いたりしているモノやコトのなかにある、
ふだんは気づかない「日本の変」をテーマにせまります。

 

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   お山の杉の子 その2            (黒岩 直樹 記)
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 息子ふたりがまだ小学生だった40代のころ。

毎月3人で山歩きをしました。

奈良盆地からの日帰りなので、大阪府や奈良県の近郊の山に限られます。

ガイドブックなどで目星をつけていくのですが、ほとんどいい思い出はない。

金剛山、葛城山、大峰山、高見山。登山口からもうスギのお出迎えです。

快適なはずの尾根伝いをしても、スギの梢がその向こうに展開しているはずの一大パノラマを隠します。

山頂もスギ林の中で視界ゼロ。ときどき現れる展望ゾーンがなければいったい何をしにいったのかわからない。

間伐をして手入れをしていればまだしも、線香のようなスギがモヤシ状に伸びていて、見通しのきかない山道はまさに「緑の砂漠」の異名にふさわしく、「腐海(不快)の森」そのものです。

野鳥も昆虫もほとんどいず、ハチが襲ってくるばかり。曽爾高原の二本ボソや古光山のように「ヤッホー!」と声を上げたくなるような山は紀伊半島では例外中の例外です。

 

和の素敵 杉林

(奈良県山中のスギ林。放置されているのか手入れが行き届い

ているのかは不明。

ただ下草が皆無で大雨がくれば鉄砲水になりそう。

ずっとこんな景色ではたのしいハイキングは成り立たない。)

 

 

弥生3月。

冴え返り冴え返りしつつもじょじょに春を実感できるよろこびあふれる季節。

卯月4月ともなればソメイヨシノが一斉に開花して日本列島は春色一色となります。

こんなうれしい季節にわざわざ泣くひとたちがいる。

――花粉症。わたしも患者のひとりです(病気、なんですかね?)。

花粉症についてはまだ不明な点がいろいろあるようです。

都会のアスファルトやジーゼルエンジンの排ガスなどが作用しているとも、極端な説では加工食品摂取による日本人の体質変化によるともいわれますが、この手の説は人体実験ができないのですべて仮説になります。

ただ、確実にいえることは直接の原因物質がスギやヒノキの花粉であるということのみ。

 

 花粉は精子です。

タンポポのわたが風にふかれてふわーとただようのは、種子です。大半の植物は花粉運搬をハチなどの昆虫に依頼します。

花というのはその昆虫誘導の目印であり、花粉採取の足場です。

もっとも、昆虫は蜜がおめあてで、花粉は引っ付き虫みたいに知らぬ間にからだにへばりつくだけ。

これら虫媒花と違い、スギやヒノキは風に依頼(依存)して花粉を撒布します(風媒花)。盲亀浮木ということばがありますが(辞書にあたってください)、花に出遭って結実する可能性がおそろしく低い。だから大量にばらまきます。

花、というと都会の歩道に植えられたチューリップやパンジーがすぐ浮かびます。

でもあれは毎年地上部が枯れる植物なればこそ咲くので、何年何十年と生きる植物、樹木がそうですが、かれらは毎年開花するわけではない。

秋のハイキングでドングリがころころ落ちてきたら乾かさないように持ち帰って鉢に埋めると、やがて芽がでて幹ができます。

このドングリの木(名前はなんでもいいです)に花が咲き実がなるころ、あなたはその木とは縁が切れているでしょう。

鉢植えでは大きく育たないし、庭に植えるととんでもない巨木になる。木が抜かれるか枯れるか、それともあなたが引っ越すか亡くなるか・・・。

スギもヒノキも30年間は成長に専念します。

樹種によって成長限度は決まっています。

ジャックの豆の木みたいに雲までは届かない。

成長が止まればみずからの死期を悟って子孫を残そうとします。

戦後、農林省と山林地主がしゃかりきになって植えまくって放置したスギが昭和の終わりから平成の今日にかけて開花期を迎えて花粉を放出しているのが、「花粉症」なのです。

あえていいます、これは「人災」です。

 

 植林して放置した結果、スギが開花期を迎えて花粉症が蔓延した。

当然植林したものの責任が問われるべきですが、そもそもなぜこんなことになったのか?

伐採して製材して販売すればよかったじゃないか。

植林主体は地主ですが、奨励したのは国です。

ところがその国が地主を裏切った。

戦後日本が国際社会に復帰する際に、諸外国と関税交渉をおこないました。

農林省は米だけは譲れません。

米の輸入関税が低く設定されると日本の農業は壊滅します。

そこで木材の税率で譲歩して米の高関税を維持しました。

昭和39年のことです。

木材輸入の税率がゼロになったことで、住宅産業などは高価な国産材よりも安価な外材を利用します。

林業家は木を伐っても採算がとれないので放置します。

当然後継者は育ちません。

林業家自身も高齢化します。

もう、今となっては手が打てないのです。

関税で保護しない国内産業の崩壊例です。

いままた歴史の先例に学ばない政治家やマスコミがこの国に跋扈しています。

建築用材では外材に敗北した。

薪炭用に売ろうにも(スギ以外)燃料革命で木材の出番がなくなった。

椅子でも机でも道具でもなにかに使えないか?

石油製品(プラスティック)の普及で木工はすたり、ここでも木材はお払い箱。

スギの間伐材のはけ口だった建築現場の足場もアルミ製品の普及で用無し扱い。

もう四面楚歌です。

放置した罪を一概には問えない。

政治と時代の闇に落ち込んでしまったのが今の日本のスギ山の実態なのです。

なにかしようにももう足腰が立ちません。

林業は子孫のためにする産業ですが、自分が植えたスギのあとしまつもできない。

相続者は放棄したほうが有利なので、所有者不明の山林も急増しています。

日本人が手放した山を外国人が買いあさらないとも限らない。

役人は過去の不始末にはほっかむりで、私有物には口をはさまないとばかり逃げます。

こんなときこそ政治家の出番なのですが、スギの木1本に1票でも与えない限りかれらはかかわろうとはしません。

無責任が重なってついに腐り始めたわが国土!

 

植物は太陽光線と水と二酸化炭素で糖分を作り成長や活動のエネルギーとします。

そのとき不要物として酸素をはき出す。

地表に酸素がなかったときに水中の植物がこの光合成をおこなったおかげで、酸素を摂取する動物が発生したのです。

ただ、植物も呼吸をします。

酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す。

成長が止まると酸素の吸収量のほうが上回ってくる。

おまけに枯死して分解されると燃焼や腐敗と同様に酸素を使って二酸化炭素が空中に排出される。熱帯雨林や日本のような飽和状態の森は決して人間に有用な酸素排出装置ではありません。

ある程度は伐採して固定した炭素を数十年はそのまま使用するのが人間にとっては健全な森林の利用法なのですが、環境保護運動は樹木の伐採を悪だと決め付け、マスコミも森が消える、人類の危機だとあおりつづけた。

 

 ここまで来て、もう割箸のことを書く気力が失せました。

杉を切り出して、製材したあとの端材で作る日本の割箸。間伐材も割箸になります。

これを自然破壊だとして、割箸追放に走った多くの日本国民!

石油からできたプラスティック箸を使わせて、石油からできた洗剤で大量の貴重な水を使って洗浄して再使用させている。

奈良県の吉野地方ではいまでも杉箸を作っています。

私はこれを求めてきて数回使用し、最後は庭で焼いて灰は土に戻します。

気がふれているとしか思えない日本人の皆様へのせめてものレジスタンスなのです。

 

         大きな杉は 何になる

         兵隊さんを 運ぶ船

         傷痍(しょうい)の勇士の 寝るお家(うち) 寝るお家

         本箱 お机 下駄 足駄(あしだ)

         おいしいお弁当 食べる箸(はし)

         鉛筆 筆入(ふでいれ) そのほかに

         うれしや まだまだ 役に立つ 役に立つ (お山の杉の子 5番原歌詞)

 

(「お山の杉の子」完)

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