春日大社 藤のお話し1
春日大社の万葉植物園
こんにちは。
先日、春日大社の万葉植物園へ行ってきました。
もちろん今が盛りの藤を拝観に。
そして植物園の方に藤のことをたくさん教えていただきました。
万葉植物園は、昭和7年、萬葉集にゆかりの深い春日野の地に昭和天皇より御下賜金を頂き、約300種の萬葉植物を植栽する日本で最も古い萬葉植物園として開園しました。
山野にいのちを芽生えさす草木が多く、現在はなるべく人的な手を加えず、自然のままに生かし、訪れる人々に安らぎを与える場として親しまれています。
萬葉集には約180種類の萬葉名で詠まれた植物が登場します。
現代の植物名とは異なるものも多く、多数の植物説があるものを含むため、約300種類が萬葉植物とされています。
鑑賞用の植物もありますが、多くは目立たずそっと生きている植物です。
食用、薬用、衣料、染料、さらには建築・工芸の材料など実用的な用途を持ち、人間の生活に密接に寄り添い生きてきました。
さあ、みなさまと一緒に藤を楽しみましょう。
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藤の管理について
夏場は水やりは毎日必要ですか?
夏場は毎日やった方が良いです。
藤は水は好きは好きだけど、実は水が好きというよりも夏場に根っこをいじめてやる方法があります。
鉢植えの方だったら、3cmくらい水を溜めたままずっとその中につけておきます。
発泡スチロールなら、横に3cmくらいのところに穴を開けたら水がそれ以上 入らないので、その中に夏場7月8月9月ぐらいまで、その水やり方法をします。
鉢植えの場合に鉢を水に浸けるというのは、何故かというと、根っこを水の中に浸けると根っこも呼吸しているので、3cmの水に浸けてちょっといじめてあげます。
10cmくらい浸けると完全に根腐れしてしまうので、根腐れしない程度の3cmくらいで生きるか死ぬかの状態を作ってあげるのです。
そうすることによって、藤は「子孫を残さないといけない」と思います。
人間でもそうですが、生き物はみんなそうで、危機に遭うと「子孫を残さないければ」と一生懸命になりますね。
植物も同じ事で、ちょっと根っこをいじめてあげたら、子孫を残そうと思って花芽をつけやすくなります。
それを7月8月の、一番花芽がつく頃にやって、ちょっといじめてあげます。
⚫︎なぜ花が終わったらすぐ摘む必要があるのですか?
花芽を付けるのが大体、花が終わって2ヶ月後。
藤が5月で終わると、7月になったらもう来年の花芽がつき出します。
花の咲く木はみんなそうで、つつじでも5月に咲いたら2ヶ月後に来年の花芽をつけます。
だから、その2ヶ月を過ぎてから剪定しますと、せっかく出来た花芽を全部カットしてしまうことになるから花が咲かなくなってしまうのです。
だから、咲いてから2ヶ月までの間に次の形を整えておいたら、そこから出て来た芽に花芽が付くので次の年にそこから花が咲きます。
その間、夏の間に葉っぱは伸ばして栄養をもらって、冬の寒い中では我慢して、そして春を感じたら花が咲く、というのがリズムです。
春日大社の藤も、藤の花が終わったら、種にならないように全部花を摘んでってます。
種になったら、その枝から弱る為、花が咲かなくなってしまうから。
摘む部位は、花の根元。
一番上の花の根元ギリギリの所を摘むと、その軸の所に来年の芽が付き始めます。
そこに来年の花芽が、この7月以降に付き始めるので、それまでに全部一旦手入れを終えます。
その後、今度は藤のつるが夏場にどんどんどんどん伸びるので、そのまま放っておいて、 葉っぱが落ちた冬にそれを適当な長さに切って剪定します。
鉢植えの場合は、花が終わったら、その一番上の花のところの根元で切ったらいいです。
つるがビーっと何本か出て来ますが、そのつるが50cmぐらいのところで一旦切っておきます。
普通は、自然のものだと、このつるが伸びて、来年、そのつるのところに短枝が出て、そして次の年にそれが咲くという事になります。
でも、園ではそれも待っていられないので、今年、つるが伸びたものを一旦50cmの所でカットします。
そうすると、夏場に向けて二番つるが一番先端の芽から出てきます。
そのことで、藤はこの間に一年経ったものと思いこみます。
「今年のつるはここからだな」と思うのです。
そういう風に、藤自身に勘違いさせています。
そうすると、この間、二番つるが二番の枝になるので、短い短枝は出ないけど、そのつるの所に一つ、二つ、三つと花が咲きます。
これが咲いてくれたら、来年また根元で切るとそこからまた枝分けが始まる事になります。
一年間短枝が出るのを待たずして、少なくてもいいから、そのつるの所に一旦花を付けさせます。
そして来年からは、それをもっと鼠講式に増やしていくのです。
ただ、それを3年繰り返したら、その枝は終わってしまいます。
だから、3年経つ間に、次のつるを出させたものを残して入れ替えをしていかないといけないですね。
藤はとても強いもの
自然のつるは、山で木にまとわりつているから、その中で、つるは死んでいきます。
また、こっちは生きていくぞと勝手に作っていく、つるもあります。
それは自然に絡まったものなので我々も手入れ出来ませんが、本来の藤の姿はそういうかたちです。
ということは、藤は、その巻いている木に巻きついて、そしてどんどん自分が太っていったら、当然ながら巻きつかれた木は苦しみます。
水上げ出来なくなります。
そして倒れます。
倒れたら次の木に行きます。
芯の幹が腐っていようが何しようが、皮一枚でもどんどん生きていくのです。
藤は本当に強い植物。
春日大社の藤は全て、山藤の土台を持ってきたところに、品種を継いで植えています。
作る時に持って来たのではないですが、ここの藤自体を作る時に、山から藤を出して来て、その山藤の頭を全部カットして、野田藤などの色々な品種の違う藤をつけていきました。
山藤は、普通はつるが左巻きに上がって来ます。
野田藤は、右巻きにしか上がりません。
なので、ここの藤は土台は山藤なので左巻きなのに、上は右巻きという風になっています。
山藤に山藤が付いていたら全部左巻きで上がっていますが、山藤の土台に野田藤で花の房が長い系の藤などを継ぐと、土台は左巻きで上がっているけど、継ぎ目から先は右巻きで上 がっていきます。
藤は比較的花が付きやすく、すてきですね。
花の房が短い藤が早咲きになり、中くらいの長さのものが中頃に咲き、一番長く伸びる 「九尺」などは、伸びるのに10日程かかるので、同じように蕾が出ても遅咲きになります。
だから、それを3種類くらい一つの木に継いでおくと、20日間ぐらいの間、順番に早咲きのものが咲いて、次に中頃のものが咲いて、最後に遅咲きのものが咲いて、というように 順番に楽しめます。
⚫︎「九尺」は本当に九尺も伸びるのですか?
「九尺」というのは、センチにしたら2m70cmぐらい。
2m70cmも伸びる藤などは、まずないですね。
「砂ずりの藤」がよく伸びて1m70cmぐらい。
それも全部が全部その長さまで伸びないです。
中には、何本かがそのくらい伸びるものはあります。
昔は、藤というのは、花が長いものを「藤」と言って、花が短いものを山の藤、「山藤」と言っていました。
昔はその2種類しかなかったです。
それを豊臣秀吉の時代に、大阪の「野田」という所で藤の品種改良が始まりました。
その時に、藤の名前が今までなかったので、正確な名前を付けようという事になり、一番長い種類は、一番大きな数字を付けようという事で「九」がつきました。
当時は尺計算だったので、「九尺」というのを、一番長いですよというイメージですね。
その次の段階を「六尺」「六尺藤」として、その次の長さを「三尺」「三尺藤」としたのですね。
九、六、三という言い方で分けて作ったものが、今色々な品種で分かれていっています。
ただ、「砂ずりの藤」というのは、昔からある長い藤で「九尺藤」の元になるものなのですが、この時代には名前がなかったので、各地で好きな名前を付けていました。
湯谷(ゆや)にあったら「湯谷の藤」、牛島にあったら「牛島の藤」。
春日は、砂につく程長くなるので「砂ずりの藤」と独自の名前を付けました。
しかし元を辿れば、殆ど皆、同じ藤という事になりますね。
「牛島の藤」が、今、日本の天然記念物の藤ですが、そこの藤が春日に来たのではないかと言れています。
藤は万葉植物の一つで、万葉の時代から藤はあったので、そういう事だと言われています。
藤は何種類あるのですか?
今、春日大社には20種類の藤があります。
山藤も含めて20種類。
藤の木自体は藤園には約200本植えられています。
房の短い細い系統があれば、それは山藤から作っている系統。
30cm、40cm以上の長さのものは、皆、野田藤系統で、野田で品種改良された後に出てきた品種です。
「昭和紅藤」というものもありますが、それは昭和になってから作られた品種。
何が違うかというと、微妙に色味が違ったりします。
「昭和紅藤」と「緋ちりめん藤」は似ていますが「緋ちりめん藤」の方が若干ピンクが濃いですね。
また、「岡山一歳藤」や、「長崎一歳藤」などの「一歳藤」と呼ばれる品種があります。
藤は、種から育てると15年くらいは花を付けませんが、土台を持って来て継ぐと、他の藤だと5~6年経つと花が咲きます。
「一歳藤」という品種は、1年か2年で花がすぐつく為、「一歳藤」と呼ばれるのです。
だから、岡山で作られた1年目で早く咲く藤が、「岡山一歳藤」、長崎で作ったものは、「長崎一歳藤」。
「黒龍藤」という藤がありますが、野田で作られた一歳藤であり、「野田一歳藤」という別名もあります。
または、「野田三尺藤」という別名も。
というように名前が色々あるものもあるのですね。
藤染めに使う藤は、「八重黒龍藤」。
「黒龍藤」は八重がボコボコボコとしたものなので、一番色が濃いです。
藤染めのスカーフを作るために、一番見えにくい所の八重黒龍藤を探して、そこから木一本分の花を全部摘んで、冷凍庫で冷凍して染色家の先生に渡します。
それを解凍しながら、順番に染めていくのですね。
今年、今あるものは今年の八重黒龍ではなく、一昨年採れたもの。
去年は作れなかったからです。
藤園にある八重黒龍は園芸品種なので人間が作ったものですが、その変種の八重があるのが若宮さま。
若宮神社本殿北側のナギの幹に大蛇のように絡まって巻き付いている藤があります。
若宮神社の「八房藤(やつふさふじ)」または「八ツ藤」と呼ばれています。
「八房藤」は、山藤が異変を起こしたもので、人間が作ろうと思って作れる藤ではないといいます。
「八ツ房の藤」とも呼ばれ、遅咲きの藤で、他の藤より一週間ほど遅く開花します。
植物は皆そうですが、原則として、八重のものには実がつきません。
八重は何から生まれたかというと、花の中央にある雌しべの周りにある雄しべ、この雄しべが奇形を起こし花びら化してしまい、花びらの枚数が増えたのが八重ということになります。
だから、受粉するにも雄しべがなくなっているので、受粉出来ないですね。
中央に雌しべ一本だけがあって、みんな周りが花びらだから受粉出来ないので、種付けをしないといけないのです。
自然現象で起こった八重の性格を園芸的に作っていったのが、他の植物の八重もそう。
桜もそうで、八重の桜にはさくらんぼはぶら下がらないですよ。
人間が増やしていかないといけないです。
一番最初は突然変異できた奇形種で、これを人間が見つけて、こんな事が出来るのだということで利用して色々な八重が生まれて来ました。
桃にしても梅にしても、実を取るものは実梅・実桃といって一重のもの。
花梅・花桃といっ たら八重の事で、実は取れず花を見るために作られているのです。
⚫︎桜の場合は?
桜の場合は、ほっておいても花芽をつけるが夏の間は水やりは毎日です。
毎日やれなくて鉢を水に浸けておくのはダメ。
水をやって、3分くらいの間にスーッと引くのが一番良いです。
何故かというと、水が引く時に空気を吸い込んでくれるから。
注射器と一緒。
根っこも常に呼吸をしています。
だから、水を溜めた時は水が充満して、周りの土に湿気がわーっとつきます。
そこからパーッと水がすいた時に表面の湿気だけを残して、そこへ空気がフーっと入る訳で、その空気と水を吸って育っていきます。
冬の間は休んでいますよ。
根っこも上も枯れて休んでいるから、その時に水をどんどんやってしまうと、もう吸う水もいらないのにやられるから枯れてしまいます。
そうなってきたら冬場は週に一回、夏場は何もかもすぐ蒸発するから葉っぱからも水分が蒸発するから、毎日水をあげてくださいね。
⚫︎毎日水をあげられない時には、どうしようもないんですか?
どうしようもない事はないですよ。
例えば一日抜けたから枯れる、そういうものではないですが、基本的には植木鉢には毎日あげます。
植物によっては、いくら山に生えていようが、鉢植えにしようが、水を欲しがるものとか色々あるので、その辺はちょっと調べてくださいね。
例えばここのアセビなども、どちらかというと土手沿いに生えるもので、このような平地に生えているものではないけど、水が抜けるのが好きなので乾燥したところも好きです。
⚫︎葉っぱの時は太陽に当てておいた方が良いですか?
それもそれぞれ。
隠樹は葉を陽に当てると良くないし、下手に剪定をバーっとして幹が裸になるような光の当たり方だと、今度は幹が焼けてしまって割れてしまいます。
品種ごとに、陽樹は陽があたる所が好き、隠樹は陰が好き。
モミジなんかも陰が好きで、水も大好き。
ただほっておいてもだいたい育ちますよ。
⚫︎藤の花は全部摘むのですか?
藤園の花は全部摘んでいます。
棚の上も全部摘んでいますね。
ただ、木に登ってまではしないですよ。
あれはもう自然のものだから、毎年咲き方が違います。
木に絡みついている自然のものは、全然咲かない年もあります。
⚫︎藤園から見える小山は?
今、藤園の横に計画されているのが、「春日の曼陀羅」。
春日の曼荼羅の掛け軸を地面に寝かせた状態の庭を作ろうという事で製作中とのこと。
掛け軸の絵のように、参道があって、御本殿があって、若宮さんがあって、というもの。
製作途中の、こんもりと小さい小山があるのが、三笠山。
その後ろが春日霊山そをイメージしており、大きな石で4つの御本殿や、若宮さんなどが配置された庭を製作中。
そのために周りに土手を作って、モミジで包んでいます。
そこまでは出来ているが、完成にはあと2~3年かかりそうとの事です。
「八重黒龍」で作った藤染めのシルクのスカーフ
これは、春日大社に生息している八重の藤「八重黒龍」で作った藤染めのシルクのスカーフ。
藤の花の蕾が開く前、花の色が一番濃い時に全部を搾り取って作っています。
だから、一年でとれるのは、30枚から50枚とれたらいいところ。
「黒龍藤」の八重がボコボコボコとしたものなので、一番色が濃くでます。
藤染めのスカーフを作る為に園で一番見えにくい所の八重黒龍藤を探して、そこから木一本分の花を全部摘み、冷凍庫で冷凍し、染色家の先生に渡します。
それを解凍しながら、順番に染めていくのですね。
以前は、藤の期間には染色家さんも毎年来られていて、藤園にある藤や草木を収集して傘に染めたり色々な事をされていました。
テントを建てて、染めた傘を並べたり、畳一枚分ぐらいの大きな染め物を何枚もロープで吊るしたり、また別のテントでは、そこで染め物だけを売ったりという事を長年ずっとやってきました。
しかし、染色家の先生も高齢により体調的にも継続が困難であるという事で、今後は手を引きたいと仰られています。
跡を次ぐ人も、お弟子さんがお一人おられるそうですが、同じような年代の方であり、その後の後継者がいない事と、この藤染めは中々出来るものではないという事で今後は製作も難しい状況です。
また、シルクの染め物の値段がどんどん上がっていく為、この値段での販売も困難になってきており、今年販売しているものは前年のものよりシルクの素材を変えて製作したものです。
そのような状況から、昨年もう作れなかったので、今年、今あるものは昨年の八重黒龍ではなく一昨年に採れたものです。
という訳で、もうここにあるもので最後とし販売終了となりました。
藤染めの一番最初のきっかけは、前の岡本宮司の「藤がこれだけあるのだから、何か染め物を考えてはどうか」という発案からです。
当時は、90cm角のシルクでしたが、ここ2~3年は近年好まれる型の細長いタイプへ変えて製作しました。
藤は高温では色が抽出が出来ない為、焚いて色を出すのではなく、低温抽出という特別な 方法で色を抽出します。
化学的なものは一切使用せず、野生や自然のものだけで染色する草木染めの手法であり、一番濃い色の藤を使ってもどうしても色が抜けてしまいます。
けれど、その、グレーにも近いような淡く美しい藤色に染まったその色合いこそが、こ のスカーフの上品な雰囲気を作り出せているように感じています。
ありがとうございます
万葉植物園には、20品種、約200本を植栽されています。
一般的な棚造りではなく、『立ち木造』というこだわりの形式をとっています。
藤棚のように見上げずに目線で花が観賞できるのですね。
そして、花が外向きに咲くことで常に光を浴び美しく見えます。
まさに自然と一体化した風光優美な庭園になっています。
早咲きの頃には、園内中に香りを広げる中国の『麝香藤』や濃いピンク色の『昭和紅藤』など、珍しい藤が多く咲きます。
期間の中旬から長い房の藤や『八重黒龍藤』などが咲き始めます。
春日大社の社紋は『下り藤』です。
藤は境内随所に古くから自生し、藤原氏ゆかりの藤ということもあり、次第に定紋化されました。
御巫(みこ)の簪(かんざし)、また春日若宮おん祭りの「日使(ひのつかい)」の冠にも藤の造花が見られます。
とりわけ御本社の「砂ずりの藤」は、名木として知られていますね。
今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
この連休は春日大社の万葉植物園でお楽しみください。
この星が笑顔あふれる毎日となりますように。
Hope there will be a smile everywhere, every day.
これからの子供たちに幸せな世の中となりますように
Wish the world will be full of happiness with children.
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