歌舞伎のよこ道あるき♪ 第4回
東海道四谷怪談(その1)
南座で26年ぶりに上演された
東海道四谷怪談。
今回も観劇ツアーと「ときめき☆歌舞伎塾」を開催しました☆
さすが、鶴屋南北!
思っていたより、奥が深かった!!
1時間半を予定していた勉強会ですが、
まったく時間が足りませんでした…
◆さすが、鶴屋南北?
好評で千穐楽を迎えた南座九月花形歌舞伎 東海道四谷怪談。
ご覧になられた方、いかがでしたか?
見応えありましたね~☆
初演時も大当たりして、公演日数をギリギリまで延長!
ロングヒットしたこのお芝居。
南北さんは、71歳!
奇抜な脚本、演出には定評があり
押しも押されもせぬ人気狂言作家でした。
さすが、鶴屋南北!
といっても、ピンとこない?
今でいうと
三谷幸喜さん、宮藤官九郎さんのような存在でしょうか?
「三谷ファミリー」なんていうとイメージしやすい?
今度のお芝居、三谷さんはあの人をどんなキャラクターに仕立て上げるんやろう?
って、思いを馳せるのって、とっても楽しくないですか?
そして、観ながら「おぉ! そうきたか!!」も楽しい♪
で、「さすが、三谷さん!」
南北さんも、そんな感じだったと思います。
当時、新作は当て書き。
今、小屋には松本幸四郎、市川團十郎、尾上菊五郎がいる。
さぁ、この3人に何をやってもらう?
このお芝居は、7月27日に初日を迎えました。
いわゆる「お盆公演」。
小屋は暑いし、幹部俳優たちはお盆休み。
毎年苦戦するお盆公演。
南北さんもこの興行にかなり不安を抱いていたようです。
四谷怪談にいろいろな工夫を練り込みました。
◆困ったら、時事ネタ!
時事ネタを芝居に取り込むのは
近松の時代から、繰り返されていました。
センセーショナルな事件が!
神田川に戸板に縛り付けられた男女の遺体が上がったのです。
それは、雑司ヶ谷のあるお武家さまの妾と間男をした中間。
ふたりは一枚の戸板に張り付けられ、なぶり殺しにされ
面影橋から神田川に流されたそうです。
このネタをどうしても使いたくて
南北さんは伊右衛門を
お岩さんのお屋敷のあった四谷左門町ではなく、
あえて雑司ヶ谷に住まわせたようです。
四谷左門町には川が流れていませんから……戸板を流せない!!!
現代のわたしたちには、わかりませんが
当時の江戸の人達は「雑司ヶ谷」と聞いただけで
戸板事件がピンっときたハズ!
菊五郎は男前で器用だから、早替わりさせようか!
「戸板事件×南北=ワクドキ!」
◆小仏小平って誰?
今ではお岩さんの名前を知らない人は、いないくらい超有名人。
当時、お岩さんの噂は「知っている人は、知っている」くらいで、
そこまでメジャーではありませんでした。
怪談のトップに君臨していたのは「小幡小平次」。
小幡小平次という人は、歌舞伎役者でした。
怪談物の幽霊役を得意としていた人です。
小平次は、奥さんの間男に殺されてしまいます。
その後、奥さんと間男の周りで数々の怪奇が起こり
怯え、苦しみ、とうとう二人とも亡くなってしまったそう。
「小平次が本当の幽霊になって、ふたりを呪い殺した」
という噂に。
小平次は、亡くなった後も
いろいろなお芝居(怪談)に登場し、人気を博します。
「怪談=小平次」は、定着し「キングオブ怪談!」になりました。
そう!
四谷怪談の「小仏小平」は、小平次の変形なんです!
お岩さんだけでは、インパクトが弱いので
小平次の力を借りたお芝居だったのです。
小平も器用な菊五郎にさせて、三役早替わりだ!!
「小幡小平次×南北=ワクドキ!!」
◆最強助っ人「忠臣蔵」!!
四谷怪談は、仮名手本忠臣蔵の外伝ということになっています。
「芝居小屋の経営が危うくなったら『忠臣蔵』を出せばいい」
というくらい、忠臣蔵は大人気。
南北は、仮名手本忠臣蔵と東海道四谷怪談を
「一幕ずつ、交互に上演して
2日かけて完結する」
という、上演方法を取りました。
忠臣蔵の「大序」で始まり「討ち入り」で完結。
その間に四谷怪談が交じる。
仮名手本忠臣蔵の世界を
四谷怪談のあらゆるところに散りばめました。
四谷左門が伊右衛門に殺された「浅草観音裏の場」、
忠臣蔵の「山崎海道の場」に、似てませんか?
稲束も掛けてありましたよね。
伊右衛門は、斧定九郎をモデルにしたそうですよ!
伊右衛門は、團十郎。
もう一人の悪人、直助は幸四郎で決まり!!!
「忠臣蔵×南北=ワクドキ!!!」
途中から、お客さんの入りが安定して
四谷怪談のみを1日で見られるように変更されたようです。
その辺りは、江戸時代の興行はフレキシブル!
四谷怪談は、奇抜な演出。ケレンも山盛り!
舞台裏を支えるスタッフにも恵まれたようです。
9月15日までの大ヒット!!
お岩さんの事、何も書けなかった…
ということで、次回も四谷怪談、続きます~。
お付き合い、お願いいたします。
写真は、今回のときめき☆歌舞伎塾。
皆さん、熱心にメモを取りながら聴いてくださいました!
観劇にお役にたったかしら?
2019(令和元)年9月 安積美香
ありがとうを世界中に
Arigato all over the World