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「超訳、日本的。」本歌取り-2 

サンプリングは本歌取りなのか

こんにちは。
前回、「本歌取り」について、その事例と定義を日本の古典から考えてみました。
本歌取りって何なんだろうという疑問は、かなり解決したかと思います。
とはいえ、それは日本の古典での検証でしたので、現代社会で、本歌取りを楽しめるものはあるのだろうか、ということで音楽で考えることにしました。

ありがとうを世界中に
Arigato all over the World

 

聴き比べてみましょう

まず、日本と世界の有名な曲を取り上げて、その元歌のどこを取ってきているか聴き比べてみましょう。
藤原定家の本歌取りの定義には合致するものはないというのが結論です。
「モトネタがわかるように・・・」という部分がないのです。
本歌取りのミソはココなんですね。
「モトネタがわかるように・・・」つくると、モトネタの世界観を背景にできますから、つくった作品に深みが出て、何とも言えないおもむきが産まれると思います。
とは言え、ミュージシャンが感銘を受けた、影響された曲にインスパイアーされ、メロディーの一部やコード進行を使って別の曲に仕上げるという意味では、「現代の本歌取り」といってもいいと思っていますが、みなさんの判断はいかがでしょうか?
もしかして、いわゆるアンサーソングは本歌取りの条件を満たしているのかもしれませんね。

 

最初は、ウルフルズの曲「ガッツだぜ!!」

紹介する日本の曲は、正確にはサンプリングではないですが、元歌があって、そこからイントロやコード進行を借りてきています。
残念ながら私の知っている範囲の曲では、元歌の世界観までは取り込んでないものが多いですが、さすがというか、ビートルズはちょいと違いますね。
まず、有名なところで、1995年にヒットしたウルフルズの曲、「ガッツだぜ!!」

「ガッツだぜ!!」
この元歌とおぼしき曲が、KC&サンシャインバンドのヒット曲、「That’s the way」
「That’s the way」
「ガッツだぜ!!」は元々、「That’s the way」の冒頭の歌詞「THAT’S A WAY A HA AHA I LIKE YOU A HA A HA」のサビの部分をトータスが「ガッツだぜ、ガハガハアイライクユー ガハガハ」と歌っただけの空耳ソングだったと、後に本人が告白しています。
元歌の意味とはまったく違う曲ですし、かろうじて「モトネタがわかるように」なっているのですが、どうでしょうか。

 

次はBOROの「大阪で生まれた女」

次はBOROの「大阪で生まれた女」とプロコル・ハルムの「青い影」。
イントロとコード進行に注目です。
「大阪で生まれた女」をラジオで初めて聴いたとき、そのイントロで「青い影」が流れてきたと思ったくらいそっくりです。


「大阪で生まれた女」

「青い影」
これも歌詞の意味はまったく違うのですが、コード進行はほぼ同じ。
メロディーラインもどこか似ている。
カラオケで「青い影」を流し、「大阪で生まれた女」の歌詞で唄ってみてください。
ほぼ歌えますから(笑)
とてもいい曲なので、それだけにちょっと残念です。

 

上田正樹さんと有山淳二さんのアルバム「ぼちぼちいこか」

イントロもコード進行もメロディーもほぼ同じという曲もあります。
違うのは歌詞だけ。
上田正樹さんと有山淳二さんのアルバム「ぼちぼちいこか」に収録されている「可愛い女と呼ばれたい」です。おかまさんの純情を歌っています。
これだけ同じなのに元歌の表記がないのがすごい!
イントロからコード進行、メロディーのほぼすべてが、「Key to the Higtway」なのです。
幸い「Key to the Higtway」は作者不詳の曲となっているので問題にならなかったのでしょう。


「可愛い女と呼ばれたい」

「可愛い女と呼ばれたい」は、ご本人映像がアップされてないので、シロートのカバーです。
いちばん、それらしいものを選んでいます。
「Key to the Higtway」は、いろんなミュージシャンが演奏していますが、比べやすいということで、クラプトンバージョンです。
Key to the Higtway

ここまでやるとダメでしょう。
元歌をライナーノーツなどに記載すれば良かったのにと思います。
おもしろい曲なので、Bluesを歌う人はカバーをやりますね。
ちなみにBluesは、基本コード3つだけの12小節なので、どれも似たような曲の感じになります。
ターンアラウンドもリフもある種の定番があり、なのでどうしても似てきます。
そんな制約の中でオリジナル性をだすBluesは、季語があり、575の語数も決められている俳句と似ているなぁと思っているのは私だけでしょうか?ワビサビもBluesにはありますし。

 

ここで、ビートルズです

ビートルズは、チャック・ベリーやフォー・トップス、ウィルソン・ピケットだけでなく、バッハやベートーベンなどから本歌取りーサンプリングした曲が多く、中には、もろバレの曲もあり、裁判で敗訴したこともありますが、でもまったく新しい曲に仕上げています。
私が、凄いなぁと思ったのが「Because」です。
あるときヨーコが弾いていた月光に興味を示したジョンが、「ヨーコ、その曲を最後から逆に弾いてくれ」と頼んだ。なかなかいけるじゃないか!と思ったジョンは、そこから曲をつくってみると、できたのが「Because」です。
つまり、「月光」のコードをうしろから逆にしてつくっちゃったのです。
「アビーロード」のB面2曲目です。
曲調も似ていますね。


「Because」

「ピアノ・ソナタ14番嬰ハ短調第一楽章(月光)」

ヒップホップやR&B(2000年代の)では、サンプリングという手法が多く使われています。
それで再び元歌がヒットした曲もあります。
「モトネタがわかるように」、「モトネタそのままではなく作品のコンセプトを変え、独自のアレンジを加える」ということは守られていますが、紀貫之の本歌取りとは違い、元歌の世界観を背景にした重層的な意味とおもむきはないのが多いと思います。
才能のある彼らに、本歌取りの意味とやり方を教えたくなりますね(^^)
きっといい音楽をやってくれそうに思います。

 

ところでJazzですが

Jazzの世界で本歌取りした曲はあまり聞きません。
「Jazzに名曲なし、名演奏あり」という平岡正明氏の言葉があるように、曲ではなく演奏にオリジナルを求めるからでしょう。
ある曲に、その曲を代表曲としている演奏家のアドリブをそのまま4小節ほど自分のアドリブに取り込んだりするプレイヤーもいます。
また、サンプリングではないですが、Jazzには「ヴォーカリーズ」という唱法があります。有名なところでは、「ランバート、ヘンドリックス&ロス」や「マッハンタン・トランスファー」です。
この「ヴォーカリーズ」が凄いなぁと思うのは、元歌、というより元の演奏をまるっきり全部、各楽器のアドリブまでそっくりそのままやるのです。
有名な曲に歌詞を付けて歌う曲、たとえば「TAKE5」のような曲はありますが、アドリブまでそっくりにやるのは彼らが出てくるまでなかった唱法です。これは、本歌取りというより、各楽器をシンガーの声に「置き換え」た新しい試みといえるでしょうね。
たとえば、マッハンタン・トランスファーに「ヴォーカリーズ」というアルバムがあるのですが、そのタイトルのまま、ほぼ全曲ヴォーカリーズです。
このアルバムの中に「Move」という歌ー曲がありますが、これはマイルス・デイビスの歴史的名盤といわれている「クールの誕生」の1曲目、「Move」をヴォーカリーズしたものです。

 


マンハッタン・トランスファー

「クールの誕生」の「Move」と聴き比べてみてください。

 

ありがとうございます

ちとマニアックになりますが、Jazzは同じ曲を何度も時期やメンバーを変えたバージョンが存在しますが、マンハッタン・トランスファーが、マイルス・デイビスだけでなくリー・コニッツのソロのアドリブもやっているので、元ネタは「クールの誕生」でしょう。
どうも音楽は本歌取りをかなりブレイクダウンした方法で、昔からやっているようですね。
では、映像、イメージの世界ではどうなのでしょう。
次回は、映画と絵画、アートの分野で考えてみたいと思います。

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

この星が笑顔あふれる毎日となりますように。
Hope there will be a smile everywhere, every day.
これからの子供たちに幸せな世の中となりますように
Wish the world will be full of happiness with children.

#ありがとうを世界中に
#ArigatoAllOverTheWorld

 

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