日本一美しい絵の具のこと、そして筆のお話し
松久佳遊さん「祈りの世界」より
胡粉という絵の具があります。
日本画の絵の具の中でも扱いにくいモノのひとつですね。
もちろん胡粉にも種類がありますが、絵を描くにはなるべく良いものを選んでいます。
胡粉の良さは、なんといってもその発色の美しさに他なりません。
キメの細かさのせいなのか、輝くような美しさをもっています。
他の絵の具に比べて拵え方も特殊です。
日本画を習った方ならご存知と思いますが
膠を使う事は共通であるものの、胡粉は少々メンドくさい作りかたをします。
1.乳鉢ですり潰す。
2.皿に取り濃い目の膠で練る。
3.しっかり練ってからダンゴ状に丸める。
あとは、皿に何度もタタキつけるなどありますが、3.がきちんと出来ていたら大丈夫な場合もあります。
などなど、手間のかかる胡粉ですがそれだけの価値のある素材なんです。
絵の具としても分かりづらいところがあります。
筆で塗って、乾いて初めて白く発色するので、塗っている時には白さがわからないのがツライところです。
経験からしか得ることが出来ないので当然アーアということもありますね。
そんな経験をたくさん重ねてみて初めて胡粉の上品な美しさを理解し操ることができるのでしょう。
単なる白の絵の具ではない胡粉の美しさは日本画の絵の具のなかではなくてはならない素材の一つですね。
お気に入りの筆があります
たくさんある種類の筆のなかで私なりのベストチョイス!
イタチ毛の骨描筆
イタチ毛の面相筆
羊毛彩色筆
と言っても同じようなものがいっぱいあるので、店先で決まったのを選んでいます。
いつのまにか沢山ある似たような筆の中から、使ってみて良かったのをリピートしている内に定着してしてきました。
軸の色と見覚えのあるラベルで選んでいて、ラベルの文字まで読んでないなー、と今思いました。
筆ってけっこう消耗品なのです。
だいだい、1作品で骨描き筆は1、2本ダメになります。
ハケは違いますよ。
ハケは一生モンです。
なので、少々お高いものでも必要ならばエイヤっと購入いたします。
でも、筆はいくら良いものでも命毛(いのちげ)と呼ばれる先っちょが消耗してしまいます。
描いている内に擦り減ってチビてしまう訳です。
骨描き筆や面相筆は線を描く筆なので
チビた筆は他の用途にまわります。
彩色筆は色を塗る筆。
先が効いて色も塗れる削用筆や尖筆と呼ばれるものなどもあります。
ほんとうに筆の種類は沢山あって、
使い手はそれぞれ描くものに合わせて筆を選んでいくうちに自分にあったお気に入りに出会えます。
新しいお気に入りの筆のキャップを捨てて
ほっそりと固めたノリを洗い流し
墨や絵の具を含ませる。
程よいコシとまっさらの命毛のシャープなラインは期間限定ではあるものの
意のままに自由自在に付き合ってくれる大切な筆なんです。
ありがとうを世界中に
Arigato all over the World