「葛の葉(その2)」 歌舞伎のよこ道あるき♪第3回
歌舞伎のよこ道あるき♪
第3回 葛の葉(その2)
前回に引き続き、葛の葉のお話。
好きなお芝居なのですが、
以前から、ちょっと引っかかるところがあったんですよね…
◆うらみ葛の葉?
恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる
信田の森の うらみ葛の葉
舞台で、葛の葉が右手、左手、そして最後は
筆を口にくわえて書きしたためる別れの一首。
最大の見せ場ですよね!
写真は、信太森葛葉稲荷神社の境内にある石碑。
よ~~~く見てください!
狐葛の葉が、筆をくわえているんです☆
けどね、わたし
最後の「うらみ葛の葉」が、ずっと引っかかっていたのです。
その前のセリフで
「本物の葛の葉姫に、うらみは一切ない」
と、言い切っている狐葛の葉。
なのに、最後の最後に「うらみ葛の葉」???
なんで~?
歌舞伎なんて、辻褄の合わないもの。
あまり、深く考えなければよいだけの話なんですけどね。
この一首は、
「芦屋道満大内鑑」の作者、竹田出雲が作った歌ではなく
和泉地方に古くから伝わる「信田妻伝説」にあるもの。
「信田妻伝説」は、何種類かあって
出会い、理由、結末もいろいろですが、
「一人の男性と雌狐が結婚し、一子を授かる。
正体のばれた狐が別れ際に一首の歌を残して去ってしまう。」
という、共通事項があります。
子どもが、母親に尻尾があるのを見つけて
「お母さん怖いよ~」
と、言われて別れるという、何とも切ない結末のお話も(涙)
う~ん。自分の人生を「うらむ」か?
◆和歌の世界の葛の葉の意味!?
ちょっと、視点を変えて和歌の世界へ。
平安時代「葛の葉」を詠んだものがいくつか残っています。
葛の葉っぱって、ご存じのとおり
裏側は、細かい毛におおわれているため白っぽく見えますよね。
表が緑
裏が白
そのため、「心変わり」「ふた心」の意味で歌われることが多いようです。
あなたの心が変わってしまって恨めしい
「うらみ葛の葉」
そして、「葉っぱの裏側を見る」という行為
「裏見」の意味もあるそうです。
あなたの心の裏側(本心)は…?
「うらみ葛の葉」
「葛の葉」という、身近に生い茂っている葉っぱに
いろいろな意味を重ね合わせる
平安時代の人々の感性が、素晴らしすぎます!
◆狐葛の葉の本心は??
で、結局狐葛の葉は何を伝えたかったの?
和泉市 JR北信太駅下車すぐ
信太森葛葉稲荷神社があります。
こちらが、信太森葛葉稲荷神社の紋です。
葛の葉をモチーフにデザインされています!
「葛の葉」は、先の写真にもあるように
3枚の葉っぱで1グループになっています。
こちらの紋は、そのうちの1枚の色が違います。
これ、1枚だけ葉っぱが裏返っているんだそうです。
昔、この地に
1枚目の葉っぱが裏返っている「代わり品種」の葛の木があったそうです。
葉っぱの「裏」が見えている
それを「裏見葛の葉」と呼んでいた!
これです!!!
狐葛の葉は、恨みの心ではなく
信田の森の裏見葛の葉が生えている場所にいるから
会いに来て!
という、メッセージを残したんです!
わたしの長年のもやもやが、すっきり晴れた瞬間です!
もちろん、歌にはいろいろな解釈があります。
けど、わたしはこの解釈を信じることにします~☆
だって、狐に恨まれると恐ろしいもの!
2019(令和元)年8月 安積美香
ありがとうを世界中に
Arigato all over the World