1. HOME
  2. 和のすてき
  3. 和のお話し
  4. 本 日本文学全集 「古事記」 池澤夏樹 翻訳

本 日本文学全集 「古事記」 池澤夏樹 翻訳

日本文学全集 「古事記」 池澤夏樹 翻訳

こんにちは。

「なんと読み進めやすい古事記なんだ!」 初っぱなからそう感じた訳本です。
表紙を開けると目次があり、次に「この翻訳の方針ー」があります。
どんな考えで、どんなスタイルで訳していったかを書いてあるページです。
まぁ、これは他の本にもよくあるページなのですが、
「この翻訳の方針ー」のあとに続き、「ーあるいは太安万侶さんへの手紙」とあります。
どんな手紙なのでしょうか。 こんな文章です。

ありがとうを世界中に
Arigato all over the World

 

古事記2

 

「親愛なる太安万侶様 初めてお便りします。
ぼくはあなたが生きた時代から千三百年後の世に生まれたものです。
この千三百年という数字を前にしてぼくは息を呑みます。」

古事記を編纂した太安万侶さんに最大限の敬意を捧げた一文です。
どれだけ読みやすくしたのか、なぜそうしたのか、
しかも原文の良さを損なわないようにするためにどんな方法をとったのか、などなど、
今を生きる私たちに読みやすく翻訳した理由と方法を「太安万侶さんへの手紙」として述べています。
もっと早くこんな訳本に出会っていたらなぁ、と思いました。
もっと多くの人たちが古事記を読んでいたことでしょう。

 

おもしろく読めることに、しかも原文のリズムを崩さずに

今風に読みやすくしたというのは大事なところで、
たとえばイザナキとイザナミの会話は、こんな具合です。
「きみの身体はどんな風に生まれたんだい」
「私の身体はむくむくと生まれたけれど、でも足りない ところが残ってしまったの」
「俺の身体もむくむくと生まれて、生まれ過ぎて余ったところが一箇所ある。きみの足りないところに俺の余ったところを差し込ん で、国を生むというのはどうだろう」
「それはよい考えね」
万事がこの調子で、なんだかくすぐったくもなってきます。
でも、これなら読めそうでしょう?

古事記について池澤さんはインタビューでこのようなことを言っています。
「『古事記』ができた当時は、一人が大人数に向かって語るという口承文芸だったから、みんなが夢中になって聴いたと思います。だから、面白くないはずはな い。ただ、今とは言葉も社会の仕組みも違いますから近づき難かった。『古事記』では、僕はできる限り余分な難しい邪魔なものを取り払ったつもりです」

 

正確さよりもおもしろさにウエイトをおくことが忠実な翻訳だ

池澤夏樹という人は「スティル・ライフ」という作品で芥川賞をとった作家です。
彼の文学論や作家論も一考に値するものですが、
私が印象的だったのは、近代日本文学というのは3つのジャンルに分けられるというところです。
3つというのは、自然主義文学、私小説、モダニズム文学です。
そのなかでも、学校でも習ったと思いますが、私小説が日本文学をつまらなくしたと言い切っています。
小説は嘘、虚構である。それをどれだけうまくやれるか、
それが文学のダイナミズムで人に共感され感動されるポイントだと、こんな意味のことを言っています。
日本最古の文学作品である古事記を「今の私たちが読めて、古事記の良さを味わえる」訳にすることを決めたのは、
こんな彼の文学観があったからでしょう。
おもしろいことに池澤さんの父上、作家・翻訳家の福永武彦さんも古事記を翻訳しているのですね。
巻末の参考文献のなかに、ちゃんと父上の古事記も入っています。
古事記とはまったく関係ないことですが、声優の池澤春菜さんは娘さんです。

 

 

ついでに池澤個人編集の日本文学集も読んでみよう

閑話休題。

池澤訳古事記は、彼が個人編集する「日本文学全集 全30巻」の第一回配本です。
この全集のラインアップもおもしろく、
芥川龍之介、三島由紀夫、志賀直哉といった全集の常連は入っていなく、
石牟礼道子や中上健次、宮沢賢治のような地方の視点を持った作家を入れていています。
古事記の後の第2回目の配本が「中上健次」です。
おもしろいですねぇ。

彼が日本文学全集の編集を引き受けたことについてはこのように語っています。
「・・・僕にとって3.11があったことが大きいですね。日本とはどういう国 か、日本人とは何者であるか、などあらためて思い、それを考えるための「日本文学全集」をやろうということになったわけです。」

 

ありがとう

日本最古の文学という理由だけでなく、だから第一回目に古事記を持ってきたのでしょう。
日本人なら誰でも知っている古事記ですが、
私を含め、読み通したことのある人は少ないのではないでしょうか。
でも本書なら大丈夫。読み出したら止められないと思いますよ。

この池澤訳の古事記を、
(社)さざれいしジャパンが配信している古事記の携帯アプリと合わせて読むと、
さらにわかりやすく、おもしろく読めると思います。
・「誰が作ったの?日本」 https://itunes.apple.com/jp/app/id954968083

■日本文学全集 第一回配本河「古事記」 出書房新社・2160円/いけざわ・なつき 45年生まれ。作家、詩人。

 

この星が笑顔あふれる毎日となりますように。
Hope there will be a smile everywhere, every day.
これからの子供たちに幸せな世の中となりますように
Wish the world will be full of happiness with children.

#ありがとうを世界中に
#ArigatoAllOverTheWorld

 

関連記事

最近の記事

アーカイブ