人間の五感 にほんよいくに(絵本)より
すてきなしぜんのすがた、そのなかにいらっしゃる、神さまを、かんじよう。
「め」、きれいなけしきを、みる。
「みみ」、とりや、むしの、こえをきく。
「はな」、花の、いいかおりをかぐ。
「て」、つちや、しょくぶつに、さわってみる。
「した」、たべものを、あじわう。
これを、ごかん、といいます。
からだ、ぜんたいで、いろいろなものを、かんじてしろう。
しぜんのすばらしさが、わかると、その力が、からだのなかに、つたわって、みんなを、げんきにしてくれるんだよ。
それも、神さまのおめぐみなんだ。
人間は、目でものを見る視覚、耳で音を聞く聴覚、鼻で匂いをかぐ嗅覚、舌で味わう味覚、そして皮膚で感じる触覚、の五感で刺激をとらえます。
動物にも五感があり、それは人間より優れた感覚を持っています。
犬の嗅覚は人間の一万倍も敏感だといわれ、警察犬として犯人を捜すのに役立っていますし、ある種類の鳥は、レーダーのように何万キロも先を見通すことが出来ます。
しかし人間は、ひとつひとつの五感の力は動物には及ばないけれど、五感全体でものを感じ、全身で自然の声を聞いて、神様の真実の世界を見るという特別な仕組みに造られています。
たとえば目は、何でもかんでも見ていると思ったら大間違いです。
そんなことをしたら人間はひっくり返ってしまう。
目に映るものの中で、自分に必要な刺激だけ取り入れて見るようになっています。
周りの音も、鼓膜は必要な音だけを聞いています。
必要でない音は聞いているようでも聞いていないのです。
だから補聴器をつけると、機械の補聴器はどれが必要な音なのか判断できないので、すべての音を拾ってしまう。
始終やかましくて、やっていられません。
これが約三十八億年かかって生まれた人間と、単なる機械の違いです。
このように人間の五感は摩訶不思議な働きで、外の刺激のうち自分に必要なものだけを、自分の刺激に変えて取り入れ、脳が判断してどう反応するか指令を返しています。
しかし、あまりに我欲が強すぎて自分のことしか考えない、まわりを無視して自分中心に行動する人間が多くなったために、いたるところで問題が起きてしまいました。
ですが五感は、自分の欲求にしたがって生活するためにあるのではないのです。
では、五感をどう働かせたらいいのでしょうか?
まず目で見るとき、すばらしい自然の姿を見ることです。
日本人は古来、循環とバランスによって成り立っている自然の中で、じっと自然の声に耳を傾けているうちに、すべての生きものの中には神様がおいでになり、我々にお恵みを下さっていることに気がつきました。
そこからあらゆるものと共生する知恵を身につけたのです。
また春日大社では、大きなお祭りの時に必ずお香を焚いてお祓いをします。
特別に調香したお香は、その香りであたりを清めます。
耳で、神様に奉納される音楽を聴くことや、また神様の言葉の代弁である祝詞をきくこと。
味覚は、自然の恵みをいっぱい受けた食べ物を味わうこと。
湧き水のすばらしい力を肌で感じることなども、あげられますが、ごれらの五感は、感覚を総動員して自然の姿や、その奥の神様を感じるためのものです。
そうやってすばらしいものに触れていると、己の罪・穢れが祓われて、人間本来の姿にたちかえり、健康で幸せな生活が出来ると考えられてきたのです。
(文:「にほんよいくに」絵本:葉室頼昭著)
(写真:http://blog.goo.ne.jp/garasunoyousei/e/d9acf2ce4bb431a2304b34dd5622b4f6)