黎明塾7月のお話し 「夏祭りと水」

こんにちは。
八百万、目に見えないものまでにも「ありがとう」と思える和の心が、この星をいつも笑顔あふれる幸せな毎日にすると信じている葉室です。
今日は天神祭。
大阪の夏祭り。
大阪天満宮が創祀されたのは平安時代後期の天暦3年(949)のことです。
一夜のうちに七本の松が生え、夜ごとに、その梢は金色に光り輝いたというのが創祀の由来です。
当代の村上天皇は、これを菅原道真公に縁りの奇端として当地に天満宮を造営され社領として周辺の七ヵ村を遣わされました。
その当時、都では落雷や疫病の流行などの天変地異が度重なり、人々はこれを配所で非業の死を遂げられた道真公の怨霊によるものと考え、その霊を鎮めるために「天満大自在天神」としてお祀りしました。
いわゆる「天神信仰」の成立です。
大阪天満宮が創祀された翌々年の天暦5年(951)に鉾流神事が始まりました。
鉾流神事とは、社頭の浜から大川に神鉾を流し、漂着した場所にその年の御旅所を設ける神事で、御旅所とは御神霊がご休憩される場所のことです。
この御旅所の準備ができると御神霊は陸路で川岸まで出御、乗船して大川を下り御旅所へ向かうルートを辿りました。
この航行が船渡御で、天神祭の起源とされています。
(文参考:天神祭)
夏祭りと水の関係
私たちは、夏といえば「祭」と、当たり前のように思っています。
日常の暮らしの中に、当たり前にそれがあって、知らず知らずのうちに、生活に馴染んでくれています。
これは、とても有り難いこと。
しかし、大切なのは、「楽しいだけの夏祭り」ではなく、その意味、いわれをきちんと知ること。
意味を知ることによって、今まで繋げてきてくれたご先祖様に感謝できるようになり、そして、次世代へ繋げていくことができるのです。
意味をきちんと知らなければ、祭はなくなっていき、人は、感謝することも忘れていってしまいます。
夏祭りは、水の祭り。
私たちにとって、とても大切な水。
我々が安穏に暮らせる元となる水。
その水を祈りによって、守ってくださっているのが天皇です。
ご先祖様は、自然と向き合い、苦労していたが、それ以上に感謝をしてきました。
物事をきちんと知ることが「感謝」に繋がります。
人間の根本の一番美しい思い、大切なものは「感謝」。
人の人たる所以は「感謝」できる。ということ。
このように、夏祭りは、楽しむだけの行事ではなく、私たちが自然に与えてもらっているものに感謝や祈りをささげているのです。
日本に伝え残っている物事の本当の意味は、もっと深いところにあります。
もう一つ、夏祭りは、鎮魂です。
もう一つ、夏祭りは、鎮魂が大きな部分を占めます。
なぜなら、夏祭りは半年の無事を「祝い」、災いが起きないように「鎮める」、それが夏の「まつり」でしょう。
これは夏が台風・日照り・疫病などの災害が起きやすい時候との関係があります。
有名な京都の「祇園祭」も、もともとは平安期に流行した疫病の原因が、荒ぶる死者によって引き起こさると考えられていたため、行われたのが始まりです。
日本人にとって「先祖」は神であり、それは子孫に幸いをもたらす面と、災いをもたらす面に二面性があります。
そのため幸いを願い、災いを鎮めるための定期的な祭りが行われました。
共同体で行う際は、前者は主に春や秋の祭り、後者は夏の祭りが相当します。
例えば夏を代表する行事である「盆」も、儀礼こそは仏教化していますが、その根底には日本古来の鎮魂のための先祖祭りがあります。
日本に仏教が伝来した際も、主に「滅罪」と「鎮魂」の力を求めていたという面もあり、そのため日本における鎮魂儀礼の大半が仏教化しました。
また鎮魂儀礼は華やかに、盛大に行うことで、より大きな力が得られるという考えもあるため、踊りや山車など盛大に行われます。
そして祭りの前日の夜を「宵(よい)祭り」といい賑やかに行われるのも、夕方以降から夜にかけてが、人間以外のモノが活動する時間と考えられていたため、神霊の力をより強く引き起こさせるために盛大に行われます。
(参考:『踊り念仏』(五来重:平凡社)
今日もありがとうございます。