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「耳の秋」 虫のすだきに目がさえる夜 雑音?とんでもございません

 


(絵:歌川広重「東都名所 道潅山虫聞之図」)

 

秋の虫、音色のお話し

こんにちは。

暑い夏が終わり、涼しくなると聞こえてきていた虫の声。
いつの間にか聞こえなくなってしまっいました。
音色がなくなりとっても寂しい、秋の夜長。
それでも月夜はまだまだ楽しませてくれます。
やっぱり日本人でよかった。

さて今日は今朝の産経新聞に載っていた「産経抄」から秋の虫の音色のお話し。
こんな風に素敵な文章が書けたらいいな。

秋の夜の大合唱

わが家にはこの夏、2週間ほど居候の客がいた。
どこから来たのか、壁と棚の隙間を出入りしていたのは幼いコオロギである。
「ろくな食べ物もなかろう」と同情を催し、庭草に放してやった。
虫のすだきを耳にする度、草陰に消えた小さな命を思い出す。

「すだく」は漢字で「集く」と書く。
虫たちの唱和はなるほど、声をかぎりにわが夜を謳歌する命の集いだろう。
日本では古代から歌や詩に詠み込み、アングロサクソン系の人々は「雑音」だとして聞き捨てた。
「日本人は虫の音を左脳で聞き、欧米人は右脳で聞く」の説がうなずかれる。

万葉集には「陰草(かげくさ)の生ひたる宿の夕かげに 鳴く蟋蟀(こおろぎ)は聞けど飽かぬかも」と声に聞きほれる歌があり、「蟋蟀の待ち悦べる秋の夜を 寝る験(しるし)なし枕と我は」と夜長を持てあます歌もある。
「耳の秋」から咲いた詩情の花といえる。

 

 

明日は「寒露」

虫のすだきに目がさえる夜も、あとどれほど続くだろう。
8日には二十四節季の「寒露」を迎える。
さわやかな秋涼(しゅうりょう)はつかの間、庭草に結んだ朝露は、やがて霜へと変わる。
先を急ぐ暦の足音がうらめしい。

と、深まる秋を書き進めたところで、新潟県では6日の最高気温が35度を超えたとのニュースが届いた。
「異常」と呼ばれる空の変転には慣れているものの、虫たちにとっては歌声の調子が狂う迷惑な秋だろう。
手元の国語辞典を繰ると「すだく」には「呻く」の字もある。
うめく、か・・・

コオロギは成虫になった後、ひとつ月半ほどで短い命を閉じる。
彼とも彼女とも知れぬこの夏のお客が、暦を逆さにめくる無情の空模様に負けず、天寿を全うしてくれればいいが。
詩情と異常の行き交う秋に、草花を揺らす澄んだ声まで呻吟(しんぎん)に聞こえてくる。
(呻吟:苦しみうめくこと)

ありがとうございます。

欧米人には雑音と聞こえる虫の音。
「虫」は秋の季語で、古より多くの人たちを楽しませてくれてます。
そう、「虫の声」、虫の鳴き声を「声」として認識するのは日本人とポリネシア人だけだそうです。

秋の虫たちがさまざまな声で鳴きます。
それらの声に「生きとし生けるもの」のさまざまな思いが知られるという思い。
人も虫もともに「生きとし生けるもの」として、等しく「声」や「思い」を持つという日本人の自然観がうかがわれます。

 

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
虫の音も人の声も同じという日本人の文化は本当に素敵ですね。

参考
なぜ日本人には虫の「声」が聞こえ、外国人には聞こえないのか?(MAG2NEWS)
四季の美

 

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