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義経千本桜 歌舞伎のよこ道あるき♪第11回

義経千本桜 歌舞伎のよこ道あるき♪第11回

 

今月は、国立文楽劇場(文楽)と松竹大歌舞伎 西コースで

義経千本桜を観る予定でした。

残念ながら、先月に引き続き公演中止。

ですが、3月に公演予定だった国立劇場(東京)での

「通し狂言 義経千本桜」を期間限定で配信されているのを観ることができました。

本来であれば、観ることのできなかった舞台が

映像ででも観ることができたのは、本当にありがたい。

ありがとうございます!

 

思っていたのと違う~

 

わたし、学生のころ義経が大好きで、

「義経記」や「平家物語」を読み

軽々と、そして大胆に戦場をかけぬける義経に

胸ときめかせていました☆

 

歌舞伎を観るようになって

「義経千本桜」という演目があることを知りました。

義経の活躍を楽しみにした舞台は…

あれっ? 義経の立ち廻りはないの???

 

 

これは、3月に国立劇場で上演予定だった

「通し狂言 義経千本桜」のポスター。

菊之助さんが、「知盛」、「権太」、「狐忠信」を演じられました。

 

そう、義経千本桜のヒーローはこの3人!

清盛の三男で西海に沈んだはずの知盛。

吉野下市に住む、親に勘当された権太。

静御前に付き従い、身を守る狐忠信。

三者三様。

全然違うキャラクターで、魅せます。

本当に名作!

 

しかし…、

「すし屋」なんて、義経は欠片も登場しません。

義経ファンとしては、

タイトルにだまされた感じでちょっとくやしい。

 

歌舞伎と文楽で上演内容が違う?

 

歌舞伎で「義経千本桜」を通し上演する場合は

「鳥居前」から始まり「川連法眼館」で終わることがほとんどです。

随分長い間「鳥居前」が物語の発端かと思っていたのですが、

違うんです!

文楽で通し上演する場合は、

「鳥居前」の前に「仙洞御所」「北嵯峨」「堀川御所」がつきます。

 

 

4月の文楽公演では、歌舞伎では観ることができない

初段のこの部分を

とっても楽しみにしていたのです。

 

「仙洞御所」では、後白河法皇が義経に「頼朝追討」を命じます。

この物語で重要なアイテム「初音の鼓」を義経に渡す場面です。

「北嵯峨」は、若葉の内侍(維盛の北の方)が六代の君と身を隠しています。

死んでしまったと思っていた維盛が高野山にいることを聞き、

出立する場面です。

「堀川御所」は、義経の住まい。

そこに、卿の君(義経の北の方)の父が頼朝の命を受けて訪ねてきます。

「知盛、維盛、教経、3人の首は偽首だ。どういうつもりだ」

と、義経にせまります。

父と夫が敵味方になってしまった卿の君は、自害してしまいます。

 

ドラマティックで

物語の重要な鍵が散りばめられているんです!

歌舞伎でも、やってほしいなぁ。

 

消された男?

 

「義経千本桜」には

実は、義経よりもかわいそうな人がいるんです。

それは、平教経。

「義経千本桜」は、平家の生き残った(偽首だった)

「知盛」、「維盛」、「教経」3人の物語でもあります。

 

知盛は、大物の浦で大立ち廻りの末、安徳帝を義経に預けて

海へ散っていきました。

維盛は、鮨屋で権太の死と梶原景時(頼朝)の恩赦を受け

出家しました。

 

教経って、誰?

歌舞伎でも、文楽でも登場しません。

文楽での通し狂言で、上演されない部分が2か所だけあるんです。

それは、「川連法眼館」の前「蔵王堂」と物語のラスト「五段目」。

 

教経は、文楽でもカットしてしまっている

「蔵王堂」と「五段目」に登場するのです。

教経は清盛の甥で、「平家随一の猛将」と言われている人です。

屋島の合戦で、佐藤忠信の兄継信を討った人でもあります。

 

「蔵王堂」では、

世を忍ぶ仮の姿(横川覚範)で川連法眼との腹の探り合いを行います。

五段目は、花矢倉で

佐藤忠信(兄の敵)と狐忠信との大立ち廻り!

「平家随一の猛将」です!

知盛よりも格上。スケールが大きい。

観たい! 観たい!!

 

なんで、上演しなくなったのかしら?

狐忠信で、ケレンたっぷりで終わった方がよい?

 

もともと歌舞伎は、日が暮れた時点で

「本日は、これ切り!」と物語の途中で幕を締めていました。

だから、どの物語も最後まで上演するということは、あまりなかったのです。

どのお芝居も大詰めは、軽~く書かれていることが多いです。(笑)

義経千本桜も最後まで上演されることって少なかったのかも。

だからって、いなかったことにされてしまっている

教経が、かわいそうすぎ!

だれか、パワフルで、義に満ちた

教経編義経千本桜をを上演してもらえませんか!

 


(2016年の吉野の桜)

来年は、お芝居も桜も晴れやかな心で観ることができますように

2020(令和二)年 卯月 安積美香

 

ありがとうを世界中に
Arigato all over the World

 

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