独楽が「縁起物」と言われているのをご存じですか?お正月に独楽を回して遊ぶのも、縁起がよいからとされています。昔から、私たちの暮らしに深く関わっている独楽、今回はそんな「縁起がよい」と言われている独楽の所以を紐解いてみたいと思います。
独楽が縁起物と言われる秘密
独楽の形をみると、中心にまっすぐと一本芯が通っています。このことから、「筋を通す」「想いを貫く」「一本立ち(一人前)」など、前向きな気持ちが連想されるようです。そして、独楽がくるくると回る様子にかけて「お金がまわる」「頭が回る」「仕事がうまく回る」などの意味が派生したと考えられています。
「人生がうまく回りますように」という願いをこめて、出産祝いなどでも独楽を送ることがあるそうです。独楽がうまく回ると、子どもが早く独り立ちするとまで言われています。
独楽が回り、その絵柄が途切れることなく繋って輪になることから、物事が円滑にうまく運ぶことに通じて縁起がよいとされているのです。さらに、独楽はおめでたい新年の季語となり、縁起物としての地位を確立していきました。
縁起がいいと言われるには、形の他に色にも秘密があります。江戸時代の「江戸独楽」は赤・黒・黄・緑・紫の「江戸五色」と言われる色彩が使われていました。江戸五色は「長寿を授けて身を守る」と言われている伝統色で、それぞれに意味を持っています。赤は健康、黒は力、黄色は富、緑は豊作、紫は高貴な物を表現しています。
色にこだわった独楽は、日本各地で見る事ができます。長崎県の指定伝統的工芸品に指定されている「佐世保独楽」は中国の陰陽五行切の影響を受けて青・赤・黄・白・黒で構成されており、宇宙や世界を表しているそうです。熊本県の「肥後独楽」は、頭を赤・黄・緑・黒で色づけし、外側を白い木地のまま残しておきます。それぞれの色が五臓を表現し、健康長寿への願いが込められているのです。色鮮やかな独楽は、おめでたい日を彩るのに各地で重宝されてきたのです。
さらに、昔から財布の中に小さな独楽を入れておくと縁起がいいとも言われています。これは、お金が出て行ってもすぐに回ってくるからで、財布に入れる時には赤字にならないよう赤い独楽ではなく黒や青、紫の独楽がいいのだそうです。独楽の芯になぞらえ、「心棒(辛抱)は金(お金)」とも言われています。
独楽と風習
このように大変縁起のよい独楽ですが、現在のような縁起物となる前は、占いや賭け事に使われていました。
平安時代には、回る独楽は神が宿るとされ、宮中の儀式で「独楽びょう師」と呼ばれる占師が独楽を回して吉凶を占い、神事や仏事の余興としても紫の紐を使って回したと言われています。さらに、江戸時代には八角面の「八方独楽」がサイコロとして賭け事の道具になっていました。独楽は、何かを決めるときの重要な道具として使われていたようです
日本各地には、縁起独楽としての風習がいくつも残っています。例えば福岡県八女市の「飾り独楽」は「新築祝い」や「結婚祝い」など、御祝いに贈られています。他にも関西地方では、家を建てるときは2個を1対として独楽を梁に家族の繁栄を願うというものもあります。
また、お正月やハレの日の食器には独楽のように縞が入った和食器が使われたりします。これは、縁起のよい独楽にあやかろうというところからデザインされているようです。
最後に
独楽の中には、昔から我々日本人を元気づけたり安心させたりするような心が宿っているのでないでしょうか。みなさんがよく知っているお正月の童謡に、~お正月には 凧あげて 独楽を回して遊びましょう~という歌詞がありますが、こんなにもおめでたい独楽を、お正月だけの遊びにするのは少しもったいない気もします。もっともっと、独楽に宿る縁起を暮らしに取り入れたいものですね。
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