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すばらしきかな書替狂言☆  ときめき☆歌舞伎 第78回

すばらしきかな書替狂言☆

ときめき☆歌舞伎 第78回

 

今年の2月は、関西では歌舞伎公演がなく…

寒がりのわたしは、冬眠しております。

公演が無いと、連載のネタも無い…

 

初春大歌舞伎で『土屋主税』がありましたね。

ちょっと、その辺りから攻めてみましょうか。

 

◆書き替えは、日本の文化?

 

本歌取り、見立て、書替、パロディ、模倣、ものまね

贋作、パクリ、著作権侵害…

 

何か基になるものがあって、

それを変化させる

 

と、先に書いたような言葉が当てはめられます。

良いこと、悪いこと。

その線引きは、とってもグレー。

 

日本人は、千年以上前から、先人の作られたものを

追加したり、削除したりしてどんどん新しい作品をつくってきました。

もちろん、良いこととして。

教養の高い人しかできない、「技」。

それが理解できる人も教養のある人。

高レベルな文化の楽しみかただと思っています。

 

歌舞伎ももちろんその文化、精神を強く引いています!

ひとつの事件を基にたくさんのお芝居ができています。

過去のヒット作品を基に、たくさんの作品ができています。

役者さんに合わせて、さらに書き替えもされているんですよ。

 

 

◆初春大歌舞伎の場合・・・

 

松竹座寿初春公演で上演された『土屋主税』は、

歌舞伎の演目『松浦の太鼓』が元のお話。

ほぼほぼ、登場人物もストーリーも同じです。

お殿様が、土屋様と松浦様で異なります。

 

 

左が初春大歌舞伎『土屋主税』のポスター。

右は、『松浦の太鼓』宣伝用写真。

 

『土屋主税』は、初代鴈治郎さんのために書き替えられた作品。

見せ場も少し、異なります。

けど、それに対して

「今回のお芝居、松浦の太鼓に似ているよね」という批判は、ありません。

そのお芝居が面白ければOK!

面白くなければアウト。

いたって、シンプル。

 

『土屋主税』は、「玩辞楼十二曲」で成駒家の家の芸

『松山の太鼓』は、「秀山十種」で播磨屋の家の芸

どちらも大切な演目として、上演されています。

 

 

『河庄』は、近松門左衛門が書いた『心中天網島』ものを

約50年後に近松半二が『心中紙屋治兵衛』として書き換えたものが、

現在上演されています。

しかも、近松門左衛門作として!

 

 

『金門五三桐』も『山門五三桐』を

猿翁(三代猿之助)さんが練り直しされました。

上演ごとに練り直し、書き直しが繰り返されて

今回も「大仏餅屋の場」は、お幸が50年ぶりに登場!

 

けど、「お幸って誰? 今までおらんかったやん!」

なんて、声はあがりませんよね。

それは、お幸が登場することによって、

筋がわかりやすくなったり、おもしろくなったりしたから。

そして、製作者が元の作品を愛しているから!

 

 

■パロディもいっぱい! 歌舞伎の懐は深い?

 

歌舞伎には「家の芸」として、大切にされている演目があります。

その家の人ではない人が、その演目を演じたい場合、

敬意を払って、タイトルを替える、衣装を替えるということもあります。

 

 

有名なのは、市川家のお家芸「歌舞伎十八番」の「毛抜」の粂寺弾正の衣装。

左の海老蔵さんは「海老」の裃。

中は愛之助さん。右は錦之助さん。

おふたりの裃は「碁盤」。

 

演じてみたいけど、いろいろな理由で、できないこともあります。

カッコイイ、ヒーローをやりたいけど…、

「女形やし」とか、「ヒーローって、キャラちゃうし」とか。

そんな場合、

ええ~い! 書き替えちゃえ~!!

と、書き替えられたものもたくさんあります。

 

『暫』→『女暫』

『助六』→『黒手組曲輪達引』

 

原作を知らなくても楽しめるように作られた秀作です。

けど、原作を知っていると、楽しめるポイントが膨らみます。

パロディも、楽しい!

 

 

先人を尊敬し、そうなりたい。

または、超えたい。

そんな思いで歌舞伎は400年以上、続いてきました。

いろいろなお芝居が作られ、また書き替えて。

たぶん、これからも!

 

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