歌舞伎のよこ道あるき♪第12回
「新薄雪物語」
まだ生の舞台観劇は難しいですが
4月に期間限定で公開された「新薄雪物語」を観ました。
観たことのないお芝居だったので、大感激~☆
関西では上演されないお芝居?
「新薄雪物語」は、人形浄瑠璃として書かれたお芝居です。
人形浄瑠璃の傑作がたくさん生まれた時期に書かれたもので
「新薄雪物語」も現在まで上演され続ける傑作のひとつ。
どんなストーリーか、前知識も入れず観たのですが
面白い!
長いお芝居なので、日を分けて観ましたが
食い入るように、画面にへばりついていました(笑)
特に「合腹」の「三人笑い」。
号泣。
何だ!このお芝居!! スゴ過ぎ!!
天下調伏の疑いをかけられた(秋月大膳に謀られた)
園部兵衛の息子左衛門と、幸崎伊賀守の娘薄雪姫。
ふたりの命を助けるために、ふたりの父親が自ら腹を切る(合腹)。
疑いをかけられた日から、「笑う」ことを忘れていたけど
死を前に、笑おうじゃないか。
と。
悲しくて悲しくて、無理矢理笑う兵部の妻の魁春さん。
その時点でもう、耐えきれなくて大泣き。
続いて兵衛の仁左衛門さん。
痛みをこらえながら、けど心晴れやかな笑い。
最後は、伊賀守の吉右衛門さん。
若いふたりの命を助けることができた、慈悲の笑い。
もう、もう、も~~~嗚咽です。
これが、歌舞伎座三月大歌舞伎の「新薄雪物語」のポスター。
吉右衛門さんが持っているのは、
左衛門の首が入っている(と見せかけた)首桶。
仁左衛門さんは、笑う直前の重苦しい顔。
このふたり、この時点ですでに自分の腹を切っています。
仁左衛門さんのお顔、よーく見てください。血の気がありません。
こんな素晴らしいお芝居を、観ることができて
ある意味、コロナさんに感謝します。
実は、このお芝居
関西では、観ることができないのです!
それは、幸崎伊賀守と園部左門という役が、
座頭級の役者さんでないと勤められないから。
地方公演に座頭級の役者さんが2人出演されるというのは
なかなか、難しいのです。
過去の上演記録を調べてみると…
歌舞伎座以外での上演は1952年の大阪歌舞伎座まで
遡らないとありません。
68年前~っ!!!
いつまで待っていても、関西ではムリかな…(涙)
映像ででも、観ることができて本当によかった。
いつか、生で観たいです!
薄雪姫と左衛門はどうなった?
いつもの悪い癖。
ふたりの両親のおかげで、逃げ落ちたふたり。
舞台は、両親が六波羅へ向かうところで幕。
その後、どうなったのかしら?
って、気になりませんか?
この物語の主軸は、
「薄雪姫と左衛門の純愛物語」と
もうひとつ、「団九郎と国俊の対決!」
「三人笑い」では、ないのです。
薄雪姫と左衛門は、別々に落ち延びましたが、
奴妻平の実家、大和の国で無事落ち合います!
追手が迫り、危ういところ
妻平の家族が身替りになり、難を逃れます。
この場面は、「当麻の段」と言うそうですが、
文楽でも1844年以降上演がないそうです。
義経千本桜でいうところの「すし屋」のような場面。
とっても重要で、見せ場もあるのですが、残念です。
団九郎と国俊って誰?
序幕、左衛門が清水寺に奉納した刀に
天下調伏のやすり目を入れた(秋月大膳の命令)、のが団九郎です。
この人は、刀の名工正宗の息子。
奉納された刀を作ったのは、もう一人の名工国行。
団九郎の怪しい行動を目撃した国行は、大膳に殺されてしまいました。
国俊は、国行の息子。
団九郎、国俊とも修行中の身。
名刀造りに欠かせない「秘伝の技」を、まだ受け継いでいないのです。
国俊は身分を隠し、正宗に弟子入りしていました。
まじめに修行する国俊。
汚い手を使ってでも、技を得ようとする団九郎。
正宗は、国俊が国行の息子であることも、
団九郎が大膳に組していることも承知していました。
立ち廻りの末、秘伝の技は国俊へ。
(正宗が息子団九郎の腕を切り落としちゃった! ひぇ~っ!)
もともと、正宗と国行は兄弟弟子。
同じ師匠から学んでいた仲。
自分の息子ではなく、国俊へ伝承するのは筋違いという訳ではなかったのです。
大詰めは、薄雪姫と左衛門が
大膳(親の敵)と果し合い。
都随一の腕と言われる大膳に、
果敢に立ち向かう薄雪姫に、びっくり!
怪我をするも、薄雪姫~左衛門~妻平と
リレー方式で、討ち果たして幕!
めでたし、めでたし~。
歌舞伎では、「刀鍛冶正宗内の場」は、何度か上演されているようです。
それ以外の「場」は…。
もしかしたら、台本も残っていないのかも?
たっぷり通しで、どなたか復活してくれないかしら?
暇なので、妄想癖が重症化中…
深刻化する前に、劇場が開くとよいな(笑)
2020(令和二)年 皐月 安積美香
ありがとうを世界中に
Arigato all over the World