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茶を喫することによっての養生の記「序」 栄西が録す

 

栄西の「喫茶養生記」

こんにちは。

臨済宗の開祖であり、建仁寺の開山でもある明菴栄西(みょうあん えいさい)(永治元年(1141)~健保3年(1215))は、廃れていた喫茶の習慣を日本に再び伝えました。
栄西が書いた「茶は養生の仙薬なり・・・」で始まる「喫茶養生記」は鎌倉時代の代表的な医書の一つです。
鎌倉幕府の3代将軍源実朝に献上したことで広く知られ日本で本格的に飲茶の習慣が普及しました。

この「喫茶養生記」の最初に書かれている「茶は養生の仙薬であり」、とっても興味ひかれませんか。
鎌倉時代を代表する医書にはなんて書かれているのでしょうね。
それでは一緒に楽しみましょう。

 


(葉室山浄住寺のお茶の木)

茶を喫することによっての養生の記「序」 栄西が録す

茶は養生の仙薬であり、人の寿命を延ばす妙術を具えたものである。
山や谷にこの茶の木が生えれば、その地は神聖にして霊験あらたかな地であり、人がこれを採って飲めば、その人は長寿を得るのである。

インド・中国にあっては共にこの茶を貴び重んじており、我が国にあってもこれを嗜(たしな)み愛している。
古今を通じての奇(めずら)しい得難い仙薬である。
これを摘みとって薬用に使わないでよかろうか。
この世界が成立した当初の頃の人間は、天人と同じように健康で頑強であったが、今の世の人々はだんだんとそれが低下し、脆弱(ぜいじゃく)となり、身体や内臓の五つの器官が朽ちた木のようになって衰えた。
針とか灸とかをもってしても、傷めるだけでよくならず、湯治をもってしても、また効かなくなった。
もしこうした治療方法をもって、これで好とすることになると、身体・内臓はしだいに衰弱し、だめになってしまうであろう。
そういうことになっては、おそろしいことではなかろうか。

昔の人は、あえて医療の方法に頼らないで病気を治したが、今の人は健康に対しての配慮がいささか欠けているようである。
つらつら思うに、天が万物を創造するにあたって、人を造ることを重要なこととしたのであり、したがって人は自分の一生の健康を保ち、一命を得ることが大事なこととしなくてはならない。
ではその一生の健康を保つ根源はどこにあるかといえば、養生することにあるのである。
その養生はどうしたら得られるのかといえば、内臓の五つの器官を健全にすることである。
五つのその器官のうち特に心臓は中心をなすもので、健全にしてなくてはならない。
その心臓を健全にする方法としては、茶を喫するのがなんといってもいちばんのいい方法である。
心臓が衰弱すると、五臓のすべてが病いを起こすことになるのである。

インドの名医であった耆婆(ジーバカ)が、亡くなってすでに二千余年になり、末世の今、その名医の術を伝えている誰があって、病いの診療をなし得るというのであろうか。
中国の医薬の処方の始祖である神農が、亡くなってまた三千余年になり、今の世にあって病いの治療に対する薬の処方を、誰がなし得るというのであろうか。

こうなっては、病いの相状をたずねてもそれを診る人がなく、そのために病人はいたずらに病に苦しみわずらい、いたずらに命を危うくするのである。
治療の方法をたずねても、診断が間違っていて、益にも立たない灸をして、それで逆に身体をそこなったりしている。

ひそかに今の世の医術を聞くに、薬を飲むことによって、心地をそこなうようなことをしているが、それは病と薬とが適合していないためである。
灸をしているに、若くして命を失うようなことになっているのは、脈と灸とが攻め合って合わないためである。
ないよりも今は、中国大陸に行われている治療の模様をたずねて、近代の治療方法を末世の人に示すにしくはない。

よって二門を立てて、この末世にあって起こるであろう病の相状を示し、ためにこの一書を記しとどめて、後の世の子孫に伝え、また多くの人々のために役立たせたいことをいうだけである。

時に健保二年甲戌(きのえいぬ)の歳の春正月、これを述べる。

 


(栂尾高山寺のお茶の木)

ありがとうございます。

いかがですか。
今日は途中きらないで見出しもつけずに一気に読んでいただきました。
鎌倉時代の医書ですよ、今の私たちに語っているようで読んでしまいました。
現代ではお茶の効能は医学的にも分析されて、色々な症状にいいと報告されてますが、この時代にここまで言い切るのは素晴らしいですね。

やっぱり「茶」は身体にいいのでしょうね。
みなさんは一日にお茶をどのくらい飲まれますか。
もちろんペットボトルのお茶ではないですよ。

ちなみに「五臓」とは続きの「巻の上」に出てきます。
「一に肝の臓は酸味を好む、二に肺の臓は辛味(しんみ)を好む、三に心の臓は苦味(くみ)を好む、四に脾の臓は甘味を好む、五に腎の臓は鹹味(かんみ)を好む」とあり、好みの味が多く入るときは、その臓だけが強くなって他の臓に勝ち、互いに病気を生ずると書かれています。
味の食べ方にも注意しないといけないですね。

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
お茶、まだまだ知らないことがたくさんですが、身体にいいのは確かのようですね。
お茶をたくさん飲まなければ!ですね。

 

「喫茶養生記」著:古田紹欽さん

 

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