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「かげ」の力を信じる日本人 なぜ「おかげさま」というの?

 

「おかげ」を広く行き渡らせたのが「御蔭参り」

こんにちは。

「おかげさま」「お蔭様」「あなとのおかげ」などと自然に口から出る日常の挨拶ことばがあります。
みなさんも何度も口にしたことがあると思います。
人から受けた恩恵・力添えに対する感謝の言葉で、相手を思いやる日本人の慎み深さが表された美しい挨拶後です。
日本人の謙虚さが表現されたいいことばのように見えますが、「あいつのおかげでひどい目にあった」という場合、相手からの影響(それも悪い方の影響)として「おかげ」ということばを遣うときもあります。

神仏の加護の意味を持つ「御蔭」を広く行き渡らせたのが、江戸時代に大流行した「御蔭参り」という伊勢神宮に参拝する民間信仰でした。
今も続いている二十年に一度ごとの社殿を造り替える式年遷宮の翌年を「御蔭年」と呼び、その年に全国から多くの参詣者が集まるのを「御蔭参り」と呼びました。
皇祖神・天照大神を祀る伊勢皇大神宮のありがたいご利生(りしょう)をいただくのを「御蔭」と称しました。

さて、なぜ「かげ」「影」「陰」を使うのでしょうか。
今日は「知っているようで知らない 日本人の謎20」著:大森亮尚さんのご本から教わりませんか。

 

「おかげさま」の「かげ」とはなにか

古代から現代まで「かげ」を検証すると、「かげ」とは神や天皇の保持する威力ある霊魂であり、それが王冠や剣など身につけるものから、蔓類など身に巻きつける植物などにシンボル化されてきました。
わたしたちが「おかげさま」とつい口にするのも、欧米人のような個人の力、自力で物事を解決していくのではなく、見えないけれど、身体のまわりにはいつも威力ある霊魂がまとわりつき、その力が自分を守ってくれ、時に自分を前に推し進めてくれる、と考えてきたからでしょう。

わたしたちの祖先は、この世には目に見える現実世界と目に見えない幽冥(ゆうめい)の世界の二つの世界があると信じ、古くからそれを現(うつ)し世と隠(かく)り世と呼んできました。
自分のすること、自分が言うことは常に目に見えない存在に守られていると信じ、慎んで行動してきたのが古代人の日本人だったのです。

今はありふれた日用品になっていますが、鏡が古墳から多く出土するのは鏡は古代では神聖な呪具(じゅぐ)だったからです。
霊魂を宿し、見えない「かげ」を映す道具の「カゲミ」が「カガミ」の原点です。
昔から鏡は大事に扱われ、鏡は夜見てはいけない、使わない時は覆いをかけておく、とやかましく言われたのです。
妊婦がどうしても葬式に出ないとでないといけない時は手鏡を胸に入れて参列するとよい、とも言われています。

 

日本人が大切にしてきたのが「かげ」

常に「わたしが」「わたしが」と自己を主張する個人主義崇拝の欧米文化にはない、自分の力を過信せず、謙虚になって、周囲の協力のおかげと感謝する、慎み深い日本文化も最近では影が薄くなってしまいましたが、この霊力の「かげの力」は失いたくはありません。
「かげ」は見えないけれど、確かにそこにあると実感できる霊力であり、その「かげ」に守られ導かれるゆえに、日本人が大事にしてきたのが「かげ」なのです。

全国に「影・陰」がつく地名がたくさんあります。
わたしの住む兵庫県では豊岡市には「上陰(かみかげ)・中陰(なかかげ)・下陰(しもかげ)」という地名が並んでいますし、神戸市には「御影」という地名があり、そこから産した「御影石」は代表的な墓石になっています。
「影山」などの地名や人名も多くあります。
いずれも霊力のある山や場所が絡んだゆえについたついた名です。

最後に面白い名前がある例を紹介しておきます。
「仮面の忍者 赤影」など、子供向けのテレビ番組に「影」という名のつく忍者が人気を呼んだことがありましたが、姫路市の北方に「西影さん」「東影さん」という不思議な性を持つ方々がかたまって住んでいる地区があります。
「北影さん」「南影さん」という苗字はありません。
その地区は古くから修験道などで霊山と崇(あが)められ「日本三彦山」のひとつといわれる「雪山彦(せつひこ)」の麓の東西にあるのです。
霊山の麓で霊山の放つ霊力のおかげをこうむりながら平和に暮らす「西影さん」と「東影さん」—忍者より素晴らしい名前だと思いませんか。

 

ありがとうございます。

「影」を辞書で引くと、「光線がさえぎられた暗い部分」であり、かつ、月の光なども影というとあります。
また、「いつも離れずについているもののたとえ」などの意味もあるといい、「影響」などという語は「御影」に近いかもしれません。
「蔭」もひかげ、こかげなどの意味で、かつ先祖のおかげとあります。

みなさんは目に見えない力、霊力を信じますか。
古代より信じる信じないではなく、そのような霊力はあると思っていたのですね。
だからあらゆるものに神が宿り、崇め祀っていてのですね。

今日も最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
見えない力「かげ」を大切にする心、私はとっても大切なことと思います。この心が日本人の心にまだ残っていることを信じています。

 

「知っているようで知らない 日本人の謎20 」著:大森亮尚さん

 

 

「いつも心に、幸せ言葉」  言葉にはとても強い力があります。
和のこころ 毎日の生活が「お蔭さまで」
いつも心に、幸せ言葉。

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