日本の伝統文様 立湧(たてわく)文様

こんにちは
今日から六月、水無月ですね。 新たな始まりがいくつか。 それぞれ、楽しくみなさまの役に立つように精進してまいります。 水無月ですが、水の無い月というわけではないですよ。 神無月の「な」と同じく、「の」にあたる連帯助詞「な」で、水の月といってるのですね。立湧文様に茄子
さて、六月の文様ってあるのかなと調べていたら、残念ながら特にないですね。 その代り、郵便局から17日に発売される「和の文様シリーズ 第1集」という切手を見つけました。(きっと買うんでしょうね(笑)) その切手シートの中に「立湧文様に茄子」という切手があります。 立湧文様?ご存知ですか? 立涌文様は、波状になった2本の曲線が向かい合い、繋ぎ繰り返されている文様です。 正倉院の宝物としておさめられている古裂、いわゆる「正倉院裂」にもよく見られます。 平安時代以降に有職文様のひとつとして、格の高い文様とされました。 現代でも日本の伝統文様として格調高く扱われている立涌文様ですが、実はこちらもその起源はササン朝ペルシア(226年~651年)のようです。 当時の日本には、シルクロードを経て、ペルシアからさまざまな染織品がもたらされていました。 また、これらの染織品とともにペルシアでつかわれていた文様も同時期に伝わってきたとされています。 風呂敷などで一般的にもよく知られている文様に唐草文様がありますね。 よく昔のお笑いコントなどで泥棒が登場すると、必ずと言ってよいほど担いでいた緑のアレの柄です。 唐草文様もこうしたペルシアから伝わった文様のひとつです。 ペルシアには、この唐草文様を縦方向に向かい合わせた意匠があり、それが立涌文様の起源ともいわれています。 遥かなるペルシアからもたらされた文様は、遠い異国の文化や人々の存在を証すものとして、さぞや当時の日本でも珍重されたことでしょう立涌文様も吉祥文様
しかし、これらの文様も平安時代になると、日本の文化や美意識と融合した日本独自の様式へと変化していきます。 なかでも立涌文様の日本独自のアレンジはバリエーションがとても多いようです。 たとえば、向かい合わされた波状の線のふくらんだスペースには、意匠によって、ほかのさまざまな文様が入り、それによってそれぞれによび名が付けられています。 菊が配された「菊立涌」、雲が配された「雲立涌」、波が配された「波立涌」など、数多くの意匠があります。 また波線の部分が、途切れとぎれになっている「破れ立涌」、竹や藤の茎やつるで形づくられている「竹立涌」「藤立涌」といったものもあります。 こうした意匠の上での遊びは、その基となる立涌文様が、シンプルでありながらも無限に続くリズム、つまり七宝繋ぎと同様な力強さを持った文様だからこそ生きてくるものでしょう。 リズムのある曲線からなる立涌文様は、身にまとったときに人の動作をより優美にみせてくれます。 そのため、能装束などの所作の美が求められる衣装に用いられることも多いのです。 ちなみに、「立涌」のよび名の由来は、水や雲などが水蒸気となって立ち涌く様子をその形から連想することからとされています。 古来より蒸気が立ち昇るさまは吉祥とされ、立涌文様も吉祥文様とされてきました。 (文参考:花邑の帯あそび:http://blog.goo.ne.jp/obiasobi/e/0da8022875d3abf95046448fb8c0b5c9)